財産を受け継いだ際に相続税がかかることはよく知られていますが、家を相続した際には必ずしも相続税がかかるとは限りません。
動産(現金など)の場合は相続税が掛かることがほとんどですが、建物の場合は不動産の評価か控除の関係で相続税がかからないケースが多いのです。

基礎控除があるから相続税がかからないケースが多い

なぜ相続税がかからないケースが多いのかと言うと、それには基礎控除が関係しています。
相続税には基礎控除といって「この金額以内であれば相続税がかからない」というラインがある(詳しくは後述)ため、多くの場合これによって家の相続税がかからないのです。

しかし、これは相続人が不動産を取得した場合に限ります。

相続人以外が取得した場合は不動産取得税が発生する

何らかの理由により相続人以外が不動産を取得した場合、相続税ではなく「不動産取得税」というものが発生します。これは基礎控除が関係しない税金です。
固定資産税評価額の3%で計算されるため、不動産価値が高ければ高いほど高額になります。

家にかかる相続税はどうやって決まるの?

現金のようにはっきりと金額がわかっているものであれば簡単に相続税が出せますが、不動産の場合は事情が変わります。

不動産の価値によって相続税も変化しますので詳しく見てみましょう。

不動産の評価が相続税に大きく影響する!

不動産は建物の経年劣化、そして周辺環境の変化などにより、その時その時で価値が大きく変化することがあります。

10年前に1億円で購入した家でも、年月の経過による劣化や周辺の地価が下がった影響などで、現在の価値が7,000万円とされることも。この場合は7,000万円を基準に相続税がかかります。
不動産に関してはあくまでも現在の建物価値が考慮されるので、購入時は高額だったとしても相続税がかからなかったり、思っていたよりも安かったりすることがとても多いのです。

相続税対策に不動産が使われることもある

前述したような不動産特有の相続税の計算方法を利用して、相続税を節約するという方法も存在しています。
1億円の現金をそのまま相続すると1億円に対して相続税がかかってしまいますが、1億円の家を購入した場合は8,000万円程度まで相続税評価が下がることが多いからです。

50%の相続税がかかると仮定すると、現金のままだと5,000万円の相続税が掛かるのに対し、不動産にした場合は4,000万円で済む計算になります。
家を相続した場合と同程度の現金を相続した場合とでは、後々かかってくる相続税が大幅に違うということを知っておきましょう。

不動産の相続税を計算してみよう!

相続税の計算

家の相続税がかからないケースが多いということがわかりましたが、果たして自分がそれに当てはまるのか?疑問をもつと思います。

ここでは不動産の相続税が実際にいくらになるのか、本当に基礎控除の範囲内に収まるか、目安となる計算方法を解説します。
正確な相続税の計算ではありませんので、目安として参考にして下さい。

基礎控除額の計算方法

最も気になるのが基礎控除額ですが、シンプルな計算式で求めることが出来ます。

相続税の基礎控除額=3,000万円+600万円×相続人の数

という式になります。

例えば相続人が3人の場合、計算式に当てはめると4,800万円になりますね。
「相続財産の総額(動産・不動産などすべてを含んだ額)が4,800万円以下であれば相続税はかからない」ということになります。

不動産価値の簡単な概算の方法

不動産価値を厳密に求めるとなると、路線価格や面積、周辺環境などその他の要素を考慮して土地の相続税評価を計算する必要があります。
この計算過程は非常に複雑で難しく、素人が計算しても正しい値が出るものではありません。

そこで簡単に出来る概算の方法を紹介します。
対象となる不動産の固定資産税評価額に1.14を掛けることで、相続税評価額を推測することが可能です。
あくまでも目安程度ですので、「相続税がいくらになるか全く検討がつかない」という時の参考程度に計算してみて下さい。

相続税が発生した場合の支払い期限や支払い方法について

家の相続税

家を相続し、もし相続税が発生することになった場合はどのような形で支払いを行うことになるのでしょうか?

相続税は動産・不動産にかかわらず、相続が始まった時点ですでに支払い義務が生じています。
相続が始まった翌日に相続税を収めても全く問題ありませんが、実際は相続税の額が決まるまでには日数が必要です。

そのため、相続税は発生するタイミングよりも「いつまでに支払うべきか」を確認しておかなければなりません。

相続税の支払い・申告期限は10ヶ月以内!

相続税の支払い・申告の期限は相続が開始された時から10ヶ月以内と定められています。
相続の開始とは「被相続人が死亡した時」を示すため、被相続人が亡くなったその日から10ヶ月以内と考えましょう。

10ヶ月を過ぎてしまうと延滞税が加算されるだけでなく、控除を受けることができなくなってしまいます。
基礎控除もこれに入るため、10ヶ月以内に申告を行わないと、本来は支払わなくて良い相続税まで支払わなくてはなりません。

10ヶ月と聞くと長いようですが、慌ただしく過ごしているとあっという間なので、後回しにせず早めに申告と納税を行って下さい。

相続税が支払えない場合は延納や物納も可能

家を相続したものの相続税が思ったよりも高額で、まとめて支払うことができないということもあるでしょう。
特に家のみを相続し、現金やその他の財産を引き継がなかった場合はその可能性が高くなります。

そのような状況になってしまった場合、延納や物納といった形での納税が可能です。
延納では相続税を最長で20年に分割して支払えるという制度です。

この場合は相続税に見合った財産を担保にする必要があり、利子もかかってくるので安易な利用はおすすめ出来ません。
支払えなければ担保にした財産も差し押さえられることになってしまいます。

物納というのは、「現金の代わりに価値のある相続財産を納めることで相続税の納税として認める」というシステムです。
しかし、自分で自由に相続財産の中から物納するものを選べるわけではなく、財産の種類によって優先順序が決まっています。

相続税の額によって相続するかどうか決めましょう

家の相続税の多くは基礎控除によって賄うことができますが、支払う必要が出てきた場合は期日を厳守することが大切です。

また、相続税の額によっては支払いが困難で、相続しないほうが楽だという不動産も少なくありません。
不動産価値をよく調べた上で相続税の額をしり、本当に相続するべきかどうかよく考えたほうが良いでしょう。