危急時遺言とは、字を書くことができない状態になった時に作成される遺言書

危急時遺言とは、被相続人が字を書けないような状態の時に作成する遺言書です。

被相続人の遺言書はきちんと書面にすることで、初めて遺言能力を持ちます。
口頭での遺言は、基本的に法律では認められていませんし、無効となるケースがほとんどです。

遺言書は、公正証書遺言書として作成するか、自筆遺書証書として作成するかになります。
ただし、急な病気や交通事故などにより健康状態が著しく悪化した場合、書面による遺言書を残したくても残せないことがあります。

その場合、口頭での遺言を有効にすることができるのが、危急時遺言です。
字を書く事もできないような状態になった場合、民法976条の「特別な方法による遺言」が適用されるのです。
この条例では「疾病その他の事由によって死亡の危急に迫った者が遺言をしようとするときは、証人3人以上の立会いを行って、その1人に遺言の趣旨を口授して、これをすることができる」と規定されています。

危急時遺言の作成には3人の立会が必要

危急時遺言の書き方としては、まずは遺言を書き留めるときに、3人の立会人の元で行われなければいけません。
この3人が証人となります。

3人の証人のうちの1人が被相続人の遺言をそのままの口頭で話して、残りの2人の証人に聞かせます。
その内容を聞いていた1人が記述していき、記述した内容を、被相続人と証人に読み聞かせをします。
読み聞かせを行なってから、内容に間違いがないことを確認します。

遺言の聞き取り後、記述に間違いがないと判断したら、3人の立会人が署名捺印をして遺言書が完成します。
緊急のため、印鑑がない場合は、拇印でも問題はありません。

捺印や拇印は被相続人の目の前で行うようにしましょう。被相続人がいない場所で行うと、改ざんの疑いが生まれるので注意が必要です。ただし、被相続人に命の危険性があり、場所を変えたほうが良い場合もあります。その場合は、場所を変えてから署名捺印や拇印をするようにしてください。

できることなら、3人の証人が被相続人のいる場所で、聞き取りから作成と署名捺印まで行ないましょう。家庭裁判所から何を聞かれても問題が生じない状況で、危急時遺言の作成を行うことが理想的です。

危急時遺言を作成する時に利害関係のある人は同席しないこと

注意点
危急時遺言を作成するときには、3人の証人が必要になるわけですが、その証人になるためには条件があります。

まず証人になれないのは、相続人になる予定の人・被相続人の配偶者や直径の親族・公証人の配偶者・未成年・4等身内の親族などがいます。
被相続人の友人や遠い親戚などであれば、証人になることができます。

緊急時に危急時遺言の証人になってくれる人を呼ぶのは非常に困難なものですが、証人になってもらえる人がいれば、危急時遺言を残すことができますし、被相続人の財産を相続するときにトラブルを回避できる可能性が高まります。

危急時遺言を作成するときには、緊急事態ゆえ、相続に関して利害関係がある人も居合わせる可能性があります。そういう人は余計な発言をしないように注意してください。
というのも、その後に家庭裁判所が証人に対して調査を行い、危急時遺言を作成時に利害関係のある人が同席していなかったか、同席していてもなにか発言をしなかったか等といった質問がされます。
被相続人との利害関係がある人がいた場合、なにか発言があるとその内容次第で裁判所の判断が変わってきます。
同席していても何も発言をしていなければ、問題なく危急時遺言を遺言書として正式に認めてもらえるでしょう。

一番良いのは、被相続人と利害関係にある人は同席しないで、3人の証人が被相続人の聞き取りと作成をその場で行って、署名捺印を行うのが間違いはありません。