遺産の相続において、一般的に相続人となる人は相続能力を持っていなければなりません。
日本において相続能力を持つ者とは自然人を指し、企業などの便宜上の法人は該当しません。
また、法律の規定では、まだ生まれていないお腹の中の赤ちゃんにも相続能力があると判断されています。

ここでは相続能力を持つ人の範囲や、それに関する事情についても触れていきましょう。

代表的な相続能力を持つ自然人=法定相続人

日本の相続制度では被相続人から見て法定相続人という概念があり、彼らが最も身近に相続能力を持つ人たちです。

一般的に遺言書がない状況では優先して遺産を相続することができますし、仮に遺言書の存在があっても「遺留分」によって最低限の遺産の相続が認められることになります。

ここでは、相続能力を持つ自然人の中でも、ごく一般的な法定相続人に該当する人たちをご紹介していきましょう。

被相続人の配偶者

最初は、被相続人から見た配偶者になります。配偶者は相続能力を持つ自然人の中では別格の存在であり、法定相続人としても相続分がすべての遺産額の2分の1と最も多いことで知られます。

ここで言う配偶者とは日本の法律によって婚姻手続きをしている者を指しますが、いわゆる夫婦としての実態はあっても法的な婚姻をしていない内縁関係になると、被相続人のパートナーとしての相続能力を持つことはありません。

しかし、遺言書などで遺贈の「受遺者」として指定されたり、相続人不在によって「特別縁故者」として裁判所に認められたりすれば内縁関係であっても事実上の相続は可能です。

被相続人の血族

次に「相続能力」を持つ自然人として知られているのが被相続人の血族「直系卑属(子どもや孫)/直帰尊属(親や祖父母)/兄弟姉妹」であり、彼らも法定相続人に該当します。

このうち、直系卑属は最も優先度が高いですが、すべての遺産のうちの被相続人の配偶者の法定相続分を除いた残りの2分の1を相続する形になるでしょう。この際に、直系卑属が残りすべてを相続すると、直系尊属と兄弟姉妹には相続分は発生しません。

また、配偶者のお腹の赤ちゃんについては、本来生まれていないので日本人としての権利能力は認められていませんが、相続に関しては民法での規定を根拠に例外的に相続能力があるものとされているのです。

血縁以外で相続能力を持つ自然人

養子縁組
上記までの相続能力を持つ人は血縁関係が存在し、分かりやすい一般的なケースになります。しかし、血縁がなくても相続能力を認められるケースもあります。

養子縁組による被相続人の子ども

まず、血縁がなくとも相続能力を持つことができる代表的なケースが養子縁組です。しかし、養子縁組には「普通養子縁組」と「特別養子縁組」という2タイプが存在します。

この2つのタイプに共通することは、養子縁組された人はその家庭にて被相続人の子どもとして法律上の権利を得る点です。そのため、当然ながら相続能力を得られることになります。
ただし、「特別養子縁組」では、生みの親との血縁はない状態になりますので、縁組先の両親つまり被相続人のみへの相続能力が得られるのです。

被相続人死亡後に姻戚関係を解消した配偶者

また、より特殊な場合として、被相続人が死亡後に残った配偶者が姻戚関係を解消するケースです。各家庭によって事情がありますので、亡くなった被相続人の家族とあまり良くない関係が続いていた場合はこのような事態も起こり得ます。

しかし、被相続人の家族からしてみると決して気持ちの良いものではなく、このような者には相続する権利はないと主張する家族も少なくありません。

それでも、法律上において被相続人の死亡後に配偶者が姻戚関係を解消しても、それは決して被相続人に向けたものではないのです。あくまで被相続人の家族に対しての親戚関係解消になりますので被相続人に対する相続能力は失うことはありません。

被相続人の家族が日本国籍を持たない場合の相続能力

日本において、相続能力を持つことができる人には、外国人も含むとされています。ここで言う外国人とは日本国籍を持たない人を指します。

この点に関しては意外に思われる方も多いのではないでしょうか?

配偶者は国籍に関係なく相続能力を持つ

日本人と法的に婚姻関係にある日本国籍を持たない外国人配偶者は、基本的に被相続人としての日本人配偶者に対する相続能力を持ちます。日本人同士の婚姻関係と同様であり、同じ相続上の権利を行使できます。

現在、日本人と外国人の婚姻ケースは急増中ですが、婚姻状態であっても日本国内に住んでいるとは限りません。この状態でも日本国籍を持たない配偶者は、日本人配偶者に対する相続能力を持つことができるのです。

子どもは生まれた場所を問わずに相続能力を持つ

日本人配偶者と日本国籍を持たない外国人との間に生まれた子どもについてはどうでしょうか?

結論から言うと、日本人配偶者の子どもであれば、出生地が日本でも海外でも、出生届によって日本国籍を取得できます。

つまり、日本国籍を持たない外国人の親と同様、子どもも日本人配偶者である被相続人に対して相続能力を得ることができるのです。

しかし、注意しなければならないのは、日本人と外国人に法的な婚姻関係のない内縁関係であった場合、出生した子どもは日本人の親が認知をしない限りは日本国籍の取得ができません。

相続能力が行使できなくなる例外事項

相続能力がない
ここまで、日本の相続制度における相続能力の概念について、該当する人を中心に説明してきました。

しかし、この相続能力の存在は決して絶対的なものではなく、条件によっては行使できなくなる例外があることも知るべきでしょう。

つまり、相続能力は善意を以て行使されるべきであり、やはり相続するに相応しい者が守られるように制度上なっているのです。ここでは、相続能力に関する例外事項をご説明していきます。

相続欠格〜被相続人の殺害を図った場合

最初は相続欠格と呼ばれる概念になります。この概念は被相続人や他の相続人を死亡させた場合、もしくは死亡させる意図で殺害を図った場合、相続能力が欠落していると判断されます。

また、被相続人に対しては死亡に関するものだけでなく、被相続人が作成した遺言書に対して偽造や破棄そして隠匿のような悪意のある行為を相続人が進めた場合でも適用されます。
また、遺言書による遺贈の受遺者としても欠格になります。大変厳しい措置と言えるでしょう。

相続人の廃除〜相続人としての品格が欠如している場合

一方、もう1つの概念である相続人の廃除はどのようなものでしょうか?これは一般的に相続人の被相続人に対する暴力による虐待や侮辱非礼などの、人としての品格が相続人として相応しくないと被相続人が生前に判断したケースになります。

被相続人はこれらを考慮して家庭裁判所に相続人の廃除を請求します。もしくは審判や調停を通して相続人の権利を喪失させることができるでしょう。

また、被相続人だけでなく、他の相続人に対する著しく横暴な振る舞いなども廃除の要因となります。しかし、先述の相続欠格とは異なり、遺言書による遺贈の受遺者としての権利は失いません。

このように、相続能力は善意的な考えを元にしており、日本人だけでなく外国人にも、生まれてくる前の赤ちゃんにも広く認められています。ただし、悪意ある行動をとれば失うこともあるのだと覚えておきましょう。