認知症患者の遺言書は有効なのか?無効なのか?

認知症の被相続人が作成した遺言書の場合は、その遺言書が有効なのか無効なのか、難しい判断に迫られます。
認知症と疑われている被相続人が、自分の財産を遺言書通りに譲るためには、医師の診断書と詳細の情報を用意するか、公正証書遺言を作成するとよいでしょう。

認知症患者が書いた遺言書を有効にするには?

被相続人の中には、遺言書を書いていても、認知症などにより自身での判断が難しくなっていることがあります。
そうした場合、遺言書がどの程度有効なのかを考えなくてはいけません。

まず、被相続人が認知症のどの段階で遺言書を書いたかによって、その遺言書が有効かどうかの判断が変わってきます。
もし被相続人が認知症になってから書いた遺言書の場合は、残念ながら無効になるケースがほとんどです。
その理由としては、被相続人が自分の言動に対して責任をとれない状態であると判断されるからです。

とはいえ、同じく認知症と診断された場合でも、遺言書が有効になることもあります。
まだ症状が軽度で、自身での判断が可能な状態であれば、遺言書は有効と判断される可能性はあります。

ただし、その場合でも、医師の診断書や詳細の情報が必要です。
その遺言書で不利な相続を余儀なくされた相続人が、「認知症だったのだから、この遺言書は無効だ!」と主張し、争いに発展する可能性もあります。
そうならないためにも、診断書や詳細情報はきちんと取得して管理しておく必要があるのです。

また、遺言書を作成したとき被相続人の意志がしっかりとしていて、遺言能力がありさえすれば、その後認知症の症状が悪化して意識が定かでなくても、その時に取り交わされた遺言は有効となります。

遺言能力の基準とは?

遺言能力
遺言書とは、自分が亡くなった後に財産を好きな人に渡すことを目的とした制度です。
遺言書には遺言能力というものがあり、被相続人の正式な意志として遺言書を残すことができる人の条件が決められています。

遺言能力には厳密な決まりがあり、その決まりに沿った遺言書だけが有効と判断されます。それ以外は遺言能力がないものとして無効とされます。
未成年者でも、15歳以上で意志決定ができる能力があると判断された場合は、遺言能力がある遺言書として認められます。

また、被保佐人であっても、遺言能力があり保佐人からの同意を得ることなく単独で遺言書を作成できる場合、正式な遺言書として認められます。
成年被後見人も、2人以上の後見人がいて、その配下で遺言書を作成することで有効な遺言書になります。成年被後見人だからという理由で、遺言が無効になることはありません。
被補助人の場合は、補助人の同意がなくても遺言能力があります。

公正証書遺言とは?

このように、認知症である被相続人が作成した遺言書は、遺言として有効かどうかはケースバイケースだということは分かりました。
認知症の被相続人が作成した遺言を、少しでも正式な遺言書として認めてもらうにはどうしたら良いでしょうか?

遺言書が有効だと判断されると、その遺言書に沿って財産の相続が進められます。
しかし、被相続人が遺言書を作成した時、周りの家族が認知症ではと思っているような場合、実際に認知症だったのかどうかを誰も過去に遡って確認することは出来ません。

そこで、公正証書遺言というものがあります。これは公証役場において公証人によって作成された遺言書です。最も安全で確実な遺言だと言えます。
認知症が進行する前に公正証書遺言を作成しておけば、まず正式な遺言書として認められます。
遺言書によって不利な相続を余儀なくされる相続人から遺言書が無効だという裁判を起こされたとしても、もう被相続人が亡くなっているのでその判断をするのは難しく、生前の公正証書遺言が覆される可能性は極めて低いでしょう。

認知症の被相続人が作成した遺言書の有効性については、判断が難しい部分も多いですが、いくつかの点に気をつけておくことで故人の意志を尊重することができるかもしれません。