被相続人の生前の希望が記された遺言書ですが、その内容次第で相続の流れが決まるという現実もあって、トラブルの原因になることも多いです。

よって、遺言書の執行を遺言執行者に依頼するケースが増えています。ところが、遺言執行者と相続人の間でもトラブルが発生することがあるのです。ここでは、その代表的な事例を3つご紹介します。

トラブル事例その1~遺言書に対する解釈の相違

遺言執行者とのトラブルでまず考えられる事例として、遺言書の内容に対する理解に関する問題があります。

遺言書の書き方や描写などについて、基本的なフォーマットも見本として存在してはいるものの、被相続人が独自のやり方で作成していることもよくあります。
その内容をどう解釈するかについては多くの方が苦労されています。
遺言執行者であっても理解に苦しむことは多く、相続人との解釈の乖離を招くことも少なくありません。

この両者における認識の相違が、スムーズに手続きを進める上での弊害となるのです。

遺言書の内容が大まかだとトラブルが多発!

また、遺言書の記載内容が大まかであるほど、相続人との解釈の相違もより深刻になりやすいものです。
それに比例するように相続人からの確認ケースも多くなり、遺言執行が滞る可能性が高くなります。

トラブル事例その2~遺言執行者の資質の問題

2つ目の遺言執行者と相続人とのトラブル例ですが、執行者の資質に問題があることで引き起こされることがあります。
この資質の問題に関しては、悪意のあるケースと能力そのものに問題のあるケースの2タイプに分けられます。具体的に考えてみましょう。

遺言執行者によって相続財産が不正管理されるケース

遺言執行者にとって、遺言書の取り扱いには何よりも「公正」さが要求されます。ところが、遺言執行者がこうした資質に欠けていると、大きな問題にも発展しかねません。

特に経験と知識が豊富な執行者であれば、これまで培ってきたノウハウから実に巧妙に不正を働くことも可能なのです。遺言執行者の不正からトラブルが発生した場合、気がついた時には取り返しがつかなかったというケースもあるので注意しましょう。

相続に詳しくない遺言執行者が選任されるケース

一方で、遺言執行者の管理能力がずさんなケースもあります。裁判所からの選任された執行者にそのような人材は少ないですが、遺言書であらかじめ指定された執行人の場合、相続人にとって不本意な人材を受け入れる確率がアップします。さらに、その執行人が相続手続きに精通していない場合は、財産の把握などに重大な漏れが生じる恐れもあります。

トラブル事例その3~遺言執行者の選定ミス

選定
さて、遺言執行者との間で発生しやすい3つ目のトラブルは、執行者の選定から間違っていたケースです。

身近な立場の人を遺言執行者に選んだケース

まず、トラブルの発生率が非常に高いのが、相続人から見て近い存在の者を遺言執行者として選任してしまうケースです。
このケースは特定の相続人と関係が良かったり、若しくは悪かったりすることで、相続人同士が感情的になり遺言執行が阻害される可能性が高まります。

健康状態が芳しくない遺言執行者を選んだケース

また、意外に多のが執行者自身が高齢者であったり健康状態があまり芳しくないケースです。
遺言執行は緻密な作業でストレスの溜まる業務です。専門家の中でも就任をためらう方も少なくありません。特に健康状態に難があると途中解任もあって、全体的な流れに遅れが生じます。

遺言執行者とトラブルにならないためのポイントとは?

遺言執行者も1人の人間ですので、相続人とトラブルに全くならないというのは難しいことです。しかし、トラブルはできるだけ避けたいもの。トラブルを回避のためには、なにを気をつければ良いのでしょうか?

遺言執行者には必ず利害関係のない第三者を選ぶようにする

相続人との間に何らかの利害関係を有する者は、遺言執行人として不適格です。公平な立場を維持できる第三者を遺言執行者には選ぶべきでしょう。
これに関しては、被相続人も遺言書の作成段階にて第三者を選ぶスタンスを持つべきと言えます。

家庭裁判所に選任してもらう

遺言執行者の「公正」を何よりも望むのであれば、可能なら家庭裁判所から選任してもらうとよいでしょう。基本的には弁護士が選任されることがほとんどなので、第三者としての機能を十分に果たしてくれることが期待できます。ただし、ある程度の費用がかかることは心にとめておきましょう。

 

遺言執行人者の選任は、遺言による相続人同士のトラブルを回避し相続を円滑に進めるのに有効な手段ですが、このように執行者と相続人の間にトラブルが発生することもあります。まずは経験豊富で公平な立場を維持できる執行者を選ぶことが大切だと言えます。