日本において相続は複数の方式で進められます。「遺言書」による相続方式もそのひとつです。

民法上では法定相続人が規定されておりますが、遺言書の方が優先されるため、相続の内容が明確になりやすいというメリットがあります。

しかし、この遺言書を適正に執行できるかどうかは別問題です。この場合に選任されるのが「遺言執行者」になります。

遺言執行者は遺言書の内容を守るのが仕事

まず、遺言執行者を選任するとどのような仕事を行ってくれるのかを見ていきましょう。相続時に遺言書が存在すると、基本的には遺言書の内容に従って相続を進める必要があるので、その取扱いは慎重にしなければなりません。相続が遺言書の内容通りに進められるように手続きをするのが遺言執行者です。

相続財産のリストを作成する

遺言執行者の仕事の内で最も重要になるのが、被相続人が所有していた相続財産を把握することにあります。

遺言書が存在していても、遺言書の中に財産が明確に記されていないこともあるでしょう。この場合に、遺言執行者が相続財産をリスト化して、それを各相続人に通知しなければなりません。必要であれば、相続人はリスト作成に立ち会うことも可能です。

執行状況に関する相続資格者からの確認には迅速に対応

また、遺言執行を進めるにあたり、多くの相続人はその執行状況について随時把握をしておきたいと思うはずです。

そのため、遺言執行者はこれら相続資格者からの執行状況確認について、迅速に対応することが求められます。これを怠慢に行うと、解任される要因となります。

遺言執行者の選任と業務遂行にかかる費用はどれくらい?

さて、遺言執行者を選任する場合、どの程度の費用がかかるのかは気になるところでしょう。

もし、相続人などの身内が遺言執行者として就任できるのであれば費用は基本的にかかりませんが、外部から選任する場合にはやはり一定の費用は避けられないと言えます。

誰が遺言執行者になるかによって報酬は大きく変わってくる

遺言執行者の費用は基本的に彼らの報酬にかかることがほとんどですが、誰が就任するかによって金額も大きく異なってきます。

例えば、最も就任するケースの多い弁護士への報酬になると、相続する資産の総額の3%前後であること一般的なようです。また、財産総額が低い場合は司法書士に依頼するケースもありますが、その場合の報酬は相続総額の1%前後となるでしょう。

遺言執行者の選任方法と求められる人物像

選任

次に遺言執行者の選任方法を見ていきましょう。選任するからにはより良い人材を選びたいのが本音というものですが、ここでは選任方法以外にどのような人材が選ばれるべきかについても触れていきます。

遺言書での指定や家庭裁判所に選任してもらうのが一般的

遺言執行者の一般的な選任方法として、遺言書の内容にて執行者を指定しているというケースがあります。また、遺言書で遺言執行者を直接指定しているのではなく、執行者を選ぶ人物を指定している場合もあります。

遺言書に何も指定がなされていないのであれば、家庭裁判所に選んでもらうことが多いです。

遺言執行者には実務経験豊富な人材を!

遺言書の執行は本来デリケートな仕事であり、公正さが求められるのは言うまでもありません。そんな中では、選任されるべき理想的な人物像とはどんなものでしょうか?

基本的には弁護士・弁理士、若しくは司法書士などの国家資格者の中で、遺言執行の実務経験が豊富な人材を選任することが無難です。慣れていない人を選任するのは、手続きを滞らせる原因になるので気をつけましょう。

遺言執行者に対する依頼者側の懸念とは?

相続の内容が複雑化する昨今、遺言執行者の意義は今後も大きくなっていくのでしょう。その一方で、依頼者が懸念する内容も多様化しています。それは遺言書の執行を特定の者に任せることにおいて、様々な弊害が発生するリスクもあるからです。

遺言執行者による財産の不正管理

相続財産の管理不正が、遺言執行者主導で進められることがあります。扱う金額が多ければ人間は魔が差すことも考えられ、専門家であればそれまでの管理ノウハウから巧妙に不正を働くことができます。

実績のある専門家でもそのような可能性は無きにしも非ず。遺言執行者を依頼するのであれば、相続人がしっかりと監視する必要があるでしょう。

遺言執行者が特定の相続人に有利なように細工をする

また、遺言で指定された執行者などになると、特定の相続人と癒着しやすい傾向があります。このようなケースでは、特定の相続人に有利になるように財産管理や分配を進めるリスクもある訳です。

遺言書の作成経緯によっては容易に書き換えられる場合もあるので、こちらもしっかりと監視する必要があります。

 

このように、遺言執行人は複雑化する相続をスムーズに進めるのに有効と言えますが、すべてを任せてしまうのではなく、相続人も常に当事者意識をもっていることが大切と言えるでしょう。