日本における相続手続きは、スムーズに行かないことが多く、当人同士で解決できないことも珍しくありません。相続する額が多ければ多いほど解決が難しくなる傾向があります。
こうした場合に「相続財産管理人」の存在は心強いです。全体的な相続の流れをスムーズにしてくれるでしょう。
今回はこの相続財産管理人の選任方法から、その手順までを解説していきます。
相続財産管理人の選任には申し立てと審理が必要
まず、相続財産管理人の選任方法から見ていきましょう。管理人を必要とする相続人が直接手続きすることができるのはもちろん、相続人の代理人がそれを進めることも可能です。
選任についての申し立てを進める
最初は選任についての申し立てから始まります。この申し立ては、家庭裁判所に対して行うことになります。申し立てには法律で定められた書類提出が求められます。
通常では、相続人や受遺者が申し立てを行うケースが多いのですが、被相続人の債権者といった第三者が利害関係者の申し立てを行うこともできます。
申し立てに対する審理を行う
申し立てを家庭裁判所にすると、裁判所はその申し立てを受理した後に審理に入ることになります。相続財産管理人は必要に応じて選任されるので、すべての申し立てにおいて認められるとは限りません。
最終的に、家庭裁判所の審理によって選任の必要性が見極められます。
相続財産管理人には弁護士が多い
それでは、相続財産管理人についてチェックしていきましょう。申し立てをされた家庭裁判所は、相続財産の管理に適任な人材を選ばなければなりません。相続財産管理人には、一般的にどのような人材が選ばれることが多いのでしょうか?
地元の弁護士事務所から選任されることが一般的
選任された相続財産管理人の傾向を見ると、通常は被相続人の住居エリアに属する弁護士が選ばれることが多いようです。
ケースによっては、相続債権者から依頼された弁護士が申し立てを行うこともありますが、家庭裁判所はその弁護士を相続財産管理人に選任するとは限りません。相続がスムーズに進められると判断できる経験豊富な専門家が選ばれることになります。
相続財産管理人の選任に必要な提出書類と費用について
さて、相続財産管理人の選任に関して、申し立てから実際の選任までをスムーズに進めるためには、どのような提出書類や費用が必要なのかを事前にしっかりと知っておく必要があります。
相続財産管理人選任申立書と各種謄本が必要
まず、相続財産管理人選任申立書の提出は欠かせません。そして、被相続人の死亡までの戸籍謄本が必要です。法定相続人や代襲相続人についても戸籍謄本を付けなければなりません。
また、相続財産となる固定資産の名義が分かる書類、預金などの流動財産などに関する証明書なども添付が必要です。
相続財産管理人への予納金に注意!
家庭裁判所に対して行う相続財産管理人の選任申し立ては、印紙や郵便料そして官報への公告料を含めて5千円ほどかかるのが一般的です。
しかし、選任された相続財産管理人に対する報酬は別に支払います。場合によっては、選任時に「予納金」と呼ばれる報酬用の資金を家庭裁判所から求められる可能性もあります。これは、多くて100万円前後と見ておいた方が良いでしょう。
相続財産管理人は相続財産の調査から支払いまでが仕事
さて、相続財産管理人が選任されるとどのような業務を進めてくれるのでしょうか?ここでは、相続財産管理人が選任後に特に重要と見なされている業務をご紹介いたします。
相続財産の正確な調査と管理を進める
相続財産管理人はまず、被相続人がどのような財産を持っていたのか正確な調査をすることから始まります。そして、これをリスト化して相続人やその他の関係者に開示しなければなりません。
また、単に財産の明確化に留まらず、債券の換金化などを進めてより流動性の高いものに事前に変えて管理しやすくすることも彼らの業務です。
相続人への支払いと相続債権者や受遺人への請求申出
そして、基本的には相続財産管理人の公告されてから2か月以内に、相続人への支払いを進めることになります。
しかし、今の世の中相続人がなかなか見当たらないというケースもあります。その場合は被相続人の債権者いわゆる相続債権者などへの請求の申出を公告することも彼らの業務になります。
このように、相続財産の優先度に応じて、故人の財産を相続人に適正に振り分けていくのが相続財産管理人の仕事です。ある程度の費用はかかりますが、相続で揉めそうな時には検討してみるのもよいでしょう。