相続にはいろいろな資産があり、中には相続してもメリットが感じられない場合もあります。なぜなら、相続財産にはプラスの財産もあれば、借金などのいわゆるマイナス財産も含まれるからです。

そうした場合、相続放棄といって、相続財産を受け取らないこともできます。ここではその方法をご説明しながらも、併せてデメリットについても考えてみましょう。

相続放棄は家庭裁判所を介して進める必要がある

相続放棄手続きには「家庭裁判所」を介する必要があります。個人が「相続を放棄したい」という意思を示すだけでは効力がありません。ここでは2つの手続き方法をご紹介しましょう。

相続放棄者自身やその他メンバーが手続きをする方法

相続放棄手続きを家庭裁判所で進めるには、相続放棄者自身やそれ以外の相続資格者が代わりに進めることが可能です。

基本的には相続放棄者による相続放棄申述受理証明書があれば手続きできますが、時としてこの書類取得を相続放棄者側で積極的に進めないことあります。このような場合、その他のメンバーが分割協議書などを以て代わりに手続をすることになります。

弁護士事務所に相続放棄手続きを代行してもらう方法

相続放棄の手続き自体は相続資格者が申述をした相続放棄申述受理証明書が得られれば、裁判所で進められるというシンプルなものですが、相続人同士の関係が悪いなどの理由で迅速に進められないケースが多いのも事実です。

その場合は、弁護士事務所に依頼して代行処理を行って進めてもらうことも可能です

相続放棄のデメリット!親族間に亀裂が生じることも…

相続放棄を進めたことで得られるのはメリットばかりとは限りません。手続きをスムーズに進めないと、場合によってはデメリットが生じることがあることも知っておきましょう。

相続放棄で親族間に思わぬ軋轢が生まれるケースもある

相続放棄をすることで、それまで存在していた相続の優先順位が変わります。残念ですが、たったこれだけのことで親族間に軋轢が生まれることもあるのです。

また、他の相続人に何も相談せず独断で相続放棄することで、思わぬ形で特定の相続人がマイナス資産を相続する目に合うなどのデメリットも起きやすくなります。

一度相続放棄をしてしまうとその撤回ができなくなる

相続放棄は基本的に被相続人が死亡してから3か月内に進めなければならないので、短期間であることは間違いありません。

これにより、相続放棄は迅速に進めなければなりませんが、1度でも放棄すると撤回ができない仕組みを持っています。そのため、相続放棄は慎重に進めることが重要です。

他に相続人が少ないほど相続放棄はしやすい

家族

相続放棄という重要な行為を行った場合、その影響が大きい相続人と比較的影響が少ない相続人が想定されます。

親戚や他の相続資格者が少ない場合は相続放棄しやすい

単純な理屈ですが、相続人になり得る親戚がトータルで少ない方が、相続放棄がしやすい傾向にあります。

相続放棄希望者が他の相続人の立場を理解しやすいこともあり、放棄における対策が取りやすいことが最大の理由と言えます。

親族の横のつながりが多いほど相続放棄は慎重に進めるべき

しかし、親戚付き合いが密な横の繋がりの強い家系になると、相続放棄に関する揉め事は自然と多くなります。

親族の人数が多い場合などは、意外と個々での付き合いが親密でないことも少なくないので、相続時において思わぬ揉め事に発展することもあり得るでしょう。

相続放棄で気をつけたい2つのトラブル例

相続放棄を進めた方の中には意外なトラブルに遭遇されたケースもあり、放棄そのものが本人の意思に関係なく周辺の人間にも影響を与えてしまうことになります。ここでは、具体的にどのようなトラブルがあるのかチェックしましょう。

相続放棄の準備中に債権者から支払いを迫られるケース

1つは相続放棄前の債権者からの支払い請求です。債権者はお金が少しでも取れればありがたいので、相続人のすべてに接触しようとします。

面倒なのは、相続放棄予定の方への支払い請求です。相続放棄前に少しでも一部弁済すると、相続したと見なされて放棄手続きができなくなります

遺産分割協議だけを進めて相続放棄手続きを取らないケース

相続放棄の意思について各相続人間で遺産分割協議にて確認したものの、相続放棄手続きを取らないうちに遺産分割協議だけを進めてしまうケースです。

確実に放棄手続きをしないと財産のうち借金などのマイナス財産については、他の相続人にまだ相続意思があると判断される可能性があるので注意が必要です。

このように、遺産放棄は他の相続人に大きな影響を与える可能性をもっています。また、申請期間が短いため、迅速に進める必要があり、そのことがトラブルの原因になる可能性もあります。できれば事前に話し合っておくことが望ましいです。