自分は相続人だから財産を確実に受け取ることができると思っていませんか?

被相続人との関係が悪い、被相続人に対して法に違反した行為を行うなど、場合によっては相続欠格と呼ばれる制度によって相続権を奪われてしまうこともあります。

ではどのような場合に相続欠格が適用されるのか、また相続欠格が適用されないためにはどのように対処すればよいのかについて考えてみましょう。

欠格事由とは?

欠格事由は大きく3つのタイプに分けられます。

被相続人の生命を侵害したら欠格事由になる

まず、相続人が被相続人を殺害した、または殺害しようとした場合には相続欠格事由となり、相続人から相続権が剥奪されます。

この殺害は明らかに殺意を持った殺人に限られ、過失によって死亡させてしまった場合は含まれないものと考えられています。

殺人を犯した場合にも、執行猶予付き判決によって執行猶予の期間が終了していれば欠格事由には該当しません。

また被相続人が殺害されたことを知っているにも関わらずこれを告発することなく隠蔽し、告訴もしなかった場合です。

しかし、是非の弁別がない場合は、殺害をした人が配偶者や直系血族であれば必ずしも該当しません。

被相続人に対する詐欺や脅迫

脅迫

詐欺や脅迫をすることによって被相続人が相続をすることに対し、撤回取り消しをしようとしているにも関わらず、それを妨げた場合は欠格事由として認められます。

詐欺や脅迫によるものですので、被相続人が実行しようとしている遺言行為を妨げることで自分が有利になろうとする認識、そして被相続人に対して恐怖心など抱かせていることになります。

例えば、自分が多くの財産を受け取ろうとして被相続人を脅迫することや、相続人が他の相続人に対して相続放棄をするように仕向けることがケースとして考えられます。

また、詐欺や脅迫によって被相続人に対して相続に関係する遺言を強制した場合にも欠格事由になります。

相続に関係する遺言書の捏造

相続に関係する被相続人の遺言書について内容を偽造や変造、破壊、隠蔽した場合には欠格事由となります。
この場合の偽造は、被相続人の遺言書であるにも関わらず相続人が作成をしているものです。つまり被相続人の意思とは関係なく、自分に都合が良いように内容を書き換えて作成することです。

また偽造は、有効に成立をしている遺言に対して行われることが条件になります。
つまり元々本人が書いていないような遺言書や公的に認められる遺言書でなければ、どれだけ偽造を行ったとしても欠格事由にはなりません。

また、変造とは被相続人が作成した本来あるべき遺言書に対して相続人が勝手に変更をすることです。

このように相続の欠格は、相続欠格事由に該当すると判断された場合に相続権を強制的に失うことになります。相続欠格はその事実が判明した時点で該当しますので、手続きなどは何も必要ありません。

相続欠格は相続廃除と違うの?

相続欠格に該当するほどではないものの、被相続人がどうしても相続をさせたくない、という思いを抱くほどの非行が相続人にあった場合には、被相続人は家庭裁判所において推定相続人から相続権の剥奪を希望する旨の申し立てができるのですが、このことを相続廃除といいます。

家庭裁判所が廃除を認めた場合には、該当する相続人は相続人としての権利を一切失うことになります。

また、もともと遺留分を持っていない推定相続人に関しては、相続をさせたくないのであればそのことを遺言書にしっかりと記載しておく必要があります。

つまり相続廃除対象ということになります。

相続廃除が認められるには2つの条件がある

モラハラ

民法において相続廃除が認められるためには以下のような2つの条件があります。

被相続人に虐待やDVのような非常に激しい侮辱を行った場合や、著しく激しい非行があった場合です。
家庭裁判所によって、どのような事情があった時に相続廃除が適用されるのかは判断が違ってきます。

「早くいなくなれば良いのに」、「病気になれば良いのに」などといった暴言を何度も繰り返した場合には重大な侮辱であると判断されることもあります。

また、推定相続人が犯罪によって何度も繰り返し刑務所に入る、もしくは被相続人が賠償請求をしてきた場合や非行を認めた場合にも相続廃除になります。

しかし、あくまでも一時的、突発的なものであれば廃除が認められないこともあります。

相続廃除の方法1「生前廃除」

相続廃除をするための方法としては「生前廃除」と「遺言廃除」の2つがあります。
まず生前廃除についてご説明します。

生前廃除とは被相続人が家庭裁判所において廃除の請求をするものであって、審判の手続きによって審理されます。
また、親族間において争いが起きてしまった場合、話し合いによってできるだけ早く解決することが理想です。

そのため、家庭裁判所が取り扱うことに関しては手続きをして話し合いますが、相続廃除に関しては審判手続となることが多いです。

相続廃除の方法2「遺言廃除」

遺言廃除は被相続人が廃除に関する遺言を書いたり、廃除請求を行ったりするものです。

相続廃除の制度は、そもそも特定の推定相続人に相続をさせないことを被相続人が認めたものですので、相続人が相続をしても良いと被相続人が許可すれば取り消すことができるのです。

その場合には、被相続人が家庭裁判所において廃除の取り消し請求を行います。
それができない場合には、廃除取り消しの遺言をのこすことによって遺言執行者が廃除の取り消し請求をすることになります。

相続欠格は撤回できない

相続欠格は基本的に撤回することはできません。相続欠格者が相続権を元に戻すことはとても難しいことです。
相続欠格の撤回を希望するのであれば、被相続人の生前に欠格事由を取り消してもらうと同時に生前贈与など別の方法で相続を受ける必要があります。

一方で相続廃除は撤回できます。被相続人の生前に相続廃除理由を許してもらう方法と、遺言書によって相続廃除を撤回してもらう方法です。

相続欠格が認められても代襲相続が可能!

代襲相続が認められるには、相続人が相続欠格となる場合や相続発生前に相続人が死亡している場合が考えられます。
相続欠格者になった人に子どもがいれば、子どもは代襲相続を受ける権利があります。

代襲相続とは、相続人が死亡してしまい、相続欠格や廃除によって相続権を失効してしまった時に子どもが相続することです。
つまり、相続欠格者になったとしても、その人に子がいればその子どもに対して相続させることになります。

どうしても相続させたくない場合、その当事者に対しては相続欠格が該当し、相続させずに済むでしょう。

しかし、その人に子どもがいればそのまま子どもが相続することになります。