相続する不動産に抵当権がついていたら、まずはどのくらいの抵当権が設定されているかを確認する必要があります。抵当権を確認した後は、債務に対処しなければなりません。その方法には相続放棄などがあります。

詳しく確認していきましょう。

まずは抵当権がどれくらいついているかを知ろう!

そもそも抵当権とは?

抵当権とは、お金を借りたい時に、家や土地をその借金の担保として確保しておくためのものです。
仮に借金が返せなかった場合、その土地建物を競売にかけ、その代金を債権の回収にあてます。

抵当権には、「債務者が担保にした不動産を占有して使用できる」という特徴があります。また、一つの不動産に複数の抵当権を設定できる点も特徴的ですね。

たとえば、一つの不動産にABCの三ヶ所の抵当権を設定できるということになります。
このように、抵当権には最低でも一ヶ所からの債務が紐づいているケースが多いと言えます。
そのため、抵当権が設定されている不動産を相続すると、債務も一緒に相続することになってしまうのです。

抵当権がどれくらい設定されているかは法務局で確認

不動産に抵当権がどれくらい設定されているかを確認するには、法務局で「登記事項証明書」の交付を請求する必要があります。証明書の取得は、法務局の窓口で申請用紙に記入して提出するだけです。

法務局に出向くまでに準備することは特にありませんが、相続する不動産の地番・家屋番号は調べておきましょう。
この地番・家屋番号は住所とは別のものです。
分からない場合は、登記権利証や固定資産税の納税通知書に記載されていますので、その番号をメモしましょう。

登記事項証明書の手数料

登記事項証明書の発行手数料は、1通あたり600円です。
もし、相続する不動産が土地と建物ならば、土地と建物にそれぞれ手数料がかかります。

発行手数料は「現金」で支払うことはできません。収入印紙を申請用紙に貼って支払わなければならない点には留意しておきましょう。

この収入印紙は法務局内でも販売していますが、事前に購入しておけばスムーズに手続きを進められますよ。

登記事項証明書の見方

登記事項証明書を発行してもらったら、抵当権がどれくらいついているかを確認していきましょう。

登記事項証明書は、まず「表題部」と「権利部」に分かれています。
抵当権に関する記載があるのは、「権利部」の方です。

「権利部」はさらに「所有者に関する事項」が書かれている「甲区」と「所有権以外の権利に関する事項」が記載されている「乙区」に分かれています。
抵当権が設定されているかは、「乙区」を確認することでわかります。

「乙区」の「登記の目的」という項目に、抵当権が設定された原因や債権の額、債務者など、抵当権に関する詳細な情報が記載されています。これらが不動産に設定されている抵当権です。ただし、同じく「乙区」に「抵当権抹消」の登記があれば、その抵当権は既に消えています。

抵当権が設定されている不動産を相続する上で注意したいこと

相続する不動産に抵当権がついていた場合の注意点を見ていきましょう。

相続税は減額されない

相続する不動産に抵当権がついていたとしても、不動産自体の評価額は変わりません。
抵当権の実行によって競売にかけられてしまうようなリスクを抱えた不動産であるにもかかわらず、相続税は減額されることが一切ないのです。

抵当不動産の債務を負担させられることがある

抵当権がついている不動産を相続すれば、その債務も相続しなくてはなりません。
この債務は、法定相続人全員で負担して返済していくのが原則です。

しかし、法定相続人全員で協議して、不動産を相続する人が返済義務を負うように決定することも可能です。
その場合は、不動産を相続した者が一人で債務を返済していかなくてはなりません。

抵当権不動産の債務が第三者のものであるなら債務は相続しなくて良い

抵当権つき不動産の債務が、被相続人のものではなく、他の第三者のものであるケースも稀にあります。
この場合は、不動産を相続したとしても債務を相続する必要はありません。
債務は第三者が負っているからです。
ただし、第三者が債務を完済しない限り抵当権はついたままですから、リスクはついてまわります。
第三者による弁済が行われなかった場合は、抵当権の実行により不動産を失うことになります。

抵当権がついている不動産への対処法

債務の額が相続財産よりも多額の場合は相続放棄すべき

まず、債務の額が遺産全体よりも巨額になる場合は相続放棄の手続きをとるべきでしょう。
相続放棄とは、被相続人の負債が多いなど、相続をすることで得られる利点が少ない時に相続を辞退することです。

相続の放棄は、その旨を被相続人の最後の住所地を管轄している家庭裁判所に申し出ることで申請できます。
ただし、相続放棄は民法第915条で「相続することを知った日から3ヶ月以内」と期限が定められています。
相続を承認するか放棄するかは、この期間内に考えなければいけません。

相続放棄をするか悩む場合は不動産査定を

相続放棄をすれば債務を負わずに済みますが、不動産の価値が明らかでない時は、相続を放棄すべきか否かの判断がなかなかつかないこともありますよね。

相続放棄の期限はたった3ヶ月ですから、相続放棄をするかを決断するためにも、時間をかけずに素早く不動産の価値を知る必要があるでしょう。すぐに不動産の価値を知りたい方は、不動産査定を依頼すると良いかもしれません
早いところならば、その日のうちに査定価格を知らせてくれます。

ただし、不動産査定は査定する会社によって、数百万円もの差が出てしまうこともあるようです。
複数の会社に査定を依頼するか、信頼できる不動産査定会社を調べて査定してもらいましょう。

相続放棄の注意点

抵当権がついている不動産の相続を放棄できる相続放棄は魅力的ですが、注意が必要な点があります。それは、相続放棄をすることで相続人が変わるということです。

たとえば、相続人の第一位順位の方が不動産の相続放棄をすれば、相続人の第二位順位の方がその不動産の相続手続きをすることになります。

しかも、相続権の移動は一度だけではありません。
さらに第二位順位の方が相続放棄すれば、第三位順位の方が相続することとなり、第三位順位の方も相続放棄すれば、第四位順位の方へと終わりなく続いていきます。

相続放棄を選択する際は、自身が相続放棄をすることで、親や兄弟に影響を与えてしまい、親族での争いになる可能性もあることを覚えておいてください。事前に親戚の方にも話した上で、相続放棄の手続きをしていきましょう。

不動産を売却して債務を弁済する

もしも、抵当権付きの不動産を相続放棄できないのならば、次は抵当権の抹消を考えましょう。たとえば、相続するものが不動産だけでなく他にも遺産がある場合、その遺産で債務を弁済し、抵当権を抹消することができます。

また、他に遺産がない場合は相続する不動産を売却し、そのお金で債務を弁済して抵当権を抹消することも可能です。ただし、債務額が不動産の価格を上回っている場合は、別途弁済資金を用意して抵当権を抹消する必要があります。

また、被相続人が住宅ローンに関する抵当権を設定する際に「団体信用生命保険」に加入していることがあります。この場合は、被相続人が亡くなった時点で保険金が残債務の弁済にあてられますので、債務が消滅していることもあるようです。

いずれにせよ、まずは相続した不動産に具体的にどれほどの抵当権がついているかを確認する必要があります。現状を把握して、正しく対処していきましょう。