相続時精算課税とは、世代間で揉めるケースの多い相続をできるだけスムーズに進める意図で作られました。
簡単に説明すると、被相続人が生前のうちに下の世代に贈与を進めておくことで、相続時の負担を減らすことができる制度です。

とはいえ、どんな制度にもメリットとデメリットは存在します。

相続時精算課税が持つ3つのメリット

まず、相続時精算課税を活用して相続税対策を進める際に、どのようなメリットがあるのかをチェックしていきます。
基本的には生前贈与を進めることによってメリットを得ることになります。

受贈人は子供だけでなく孫も対象

かつて、相続時精算課税において、受贈人には贈与人から見て子供しかなれなかったのですが、その後の法改正により、孫も受贈人になれるようになりました

高齢化社会が進んだ現代において、これは大きな変更だと言えます。というのも、最初から孫に贈与できることで、世代を超えた年数的なメリットが大きくなったからです。

2,500万円以内の贈与財産であれば贈与税は非課税

また、相続時精算課税にて進める贈与であれば、一定額までは控除額が認められています。この分が事実上、贈与税の非課税枠として機能します。
2,500万円までの控除が認められているので、2,500万円以下の贈与額であれば税金はかからないということになります。多くの受贈人が大きい節税メリットを得られる制度です。

将来の相続人へ早期贈与することでトラブル防止

さらに、生前贈与という形で財産を将来の相続人に対して早期に権利移動できることは、相続時に発生しがちな様々なトラブルを回避することにも繋がります
というのも、早期の段階で贈与を済ませておけば、いわゆる相続に付随しがちな感情的な問題を減らすことができるのです。
被相続人は、この制度を利用することで、家族内の要らぬ摩擦を防止できるので安心でしょう。

相続時精算課税が持つ3つのデメリット

チェック

一方で相続時精算課税にはいくつかのデメリットも見受けられます。ここでは、その具体的なデメリットがどうなっているのかチェックしましょう。

土地を贈与すると相続税の大幅減税は使えなくなる

相続時精算課税の手続きにおいて、デメリットを最も受けるのが「土地」に関する贈与になります。
その理由は、相続時精算課税の手続きを行うことによって、相続税における「小規模宅地等の特例」の大幅減税が使えなくなる点にあります。

手続きを一度でも進めてしまうとストップができない

また、相続時精算課税の手続きに関しては、特に覚えておくべきポイントは、1回でも手続きを進めると、その後何らかの事情が発生してもストップできないということです。
そのため、手続きをする前には慎重な考慮する必要があります。

将来の税制改正によって結果的に損をするリスクがある

税制はその時々の政情によって改定されます。現在は一定の節税効果を受けられていたとしても、近い将来に制度の改定が行われると、結果的に損をするリスクもあります。
これは現在の政権や税制担当者が変わっただけでも影響が出かねないくらい、不安定なものだと理解しておきましょう。

相続の見込みがない家庭ほど相続時精算課税を利用すべし

ここまで、相続時精算課税に関するメリットとデメリットをご紹介してきました。それは、この制度を利用すべき方とそうでない方がいらっしゃることを意味しています。

相続時精算課税は、生前贈与主体で節税を達成する制度なので、もし将来的に相続が発生してしまうと、その時にこの生前贈与分もまた精算することになります。
つまり、支払う税金をトータルで見た場合、節税効果がかなり薄れてしまうのです。
将来的に相続財産が発生する見込みがある家庭よりは、相続の見込みがない家庭が利用すべき制度と言えるでしょう。

 

相続税の節税には多くの手法が存在しますので、それらを併用して総合的に節税効果を高めていくのが本筋です。そのため、土地の贈与のところでも触れたように、相続時精算課税を活用することで他の控除が受けられなくなる可能性があることは知っておくべきです。