未成年が相続をする時には、どのような点に注意すれば良いのでしょうか。
未成年による相続についてご紹介します。

そもそも未成年に法律行為はできない

基本的に未成年は法律行為をすることができません。
大人よりも判断能力が低く、トラブルに巻き込まれる可能性を未然に防ぐためです。

単独での法律行為は一切できないために、契約書などを作成するときにも法定代理人(親)の同意が必要になります。

相続においても例外ではありません。
相続としては、遺産分割協議を行った上で財産を獲得するだけでなく、相続辞退、放棄によって一切受け取らないことも法律行為として考えられることです。

このような重大な決定を、未成年者だけの判断で行えるのかといえばそうではないために、代理人を立てる必要があるわけです。

相続における法定代理人

法定代理人は、基本的には親権者が行いますが、相続に関していえば、親権者が法定代理人になることはできません。
親子だからといって、同じ相続人として利益が同じかといえば、そうではないからです。

例えば父親が亡くなった場合に、母親と未成年の子供が財産を相続するとします。
その場合は、母親と子供が財産分割協議を行います。

この時に母親が未成年の子供と協議を行ったとしても、母親が代理人であれば、子供に不利な遺産分割を行ってしまう可能性もあります。

さらに複雑な話もあります。
父親が亡くなった場合に、母親と兄弟3人が残されたとします。
その場合に一人は非常に愛情をかけて育てていたものの、他の二人への愛情が少なく、1人に対して財産を多く分割しようとする親もいるわけです。

親子だからといって必ずしも皆が平等なのではなく、偏った財産の分割が行われることもあるのです。
そのようなことになると、子供が適切な遺産分割による財産の受取ができなくなるかもしれません。

特別代理人を任命することができる

特別代理人
前述したように、親が代理人となってしまった場合には子供に対しての不平等が発生してしまい、遺産の相続に大きな格差が生まれてしまうことがあります。
そのような事態を避けるために、法定代理人ではなく、特別代理人の選任を請求することが可能です。

そこで選任された特別代理人は子供の代理人となって、遺産の分割について協議します。
特別代理人の選任をする場合には、あなたにお願いします、などと口約束などではいけません。

代理人の選任をする場合には、子供が住む家の住所にある家庭裁判所で申し立てをする必要があります。
また未成年の子供が複数人いる場合にも、特別代理人を依頼することになります。

特別代理人の専任に必要なもの

特別代理人の選任には、次のようなものが必要です。

  • 申立書
  • 未成年者の戸籍謄本
  • 親権者又は未成年後見人の戸籍謄本
  • 特別代理人候補者の住民票
  • 特別代理人が必要なことを証明する資料

未成年者の利益を保護する、ということを十分に考慮した上で、利害関係のない最も適していると思われる人を選ぶ必要があります。

未成年者控除による相続税対策

未成年者控除

特別代理人の選任を行って財産の分割が終了すれば、いよいよ遺産の相続です。
ここで注意すべきなのは未成年者であっても、相続税を納めなければならないことです。

未成年者が相続人となった場合、未成年者控除という制度の利用が可能です。
未成年者控除の控除額ですが、未成年者が満20歳になるまでの年数に10万円を掛けた金額が控除の対象となっています。

簡単に言えば、18歳であれば20歳までの年数掛ける10万円ですので、20万円ということになります。
相続税が発生するほどの高額な財産があるケースはそこまで多くはないでしょう。
しかし、相続税が発生する場合には未成年控除を利用して税金の負担を少しでも少なくしたほうが良いでしょう。

未成年者の相続放棄

また未成年者でも相続を放棄することができます。
どうして財産をわざわざ放棄するのかと思われるかもしれませんが、相続できるもの全てがプラスのものだけではありません。

借金などマイナスな相続財産しか残っていないことも十分にあり得ます。
未成年者であるにも関わらず、多額の借金などを抱えて生きていくことは非常に大変です。

相続人はその年齢に関わらず、相続放棄の手続きを行わなければ単純承認とみなされ、マイナスの財産も相続しなければならなくなってしまいます。

そのような場合には相続放棄も考えるべきです。
借金を踏み倒すイメージになってしまうかもしれませんが、相続放棄も法律行為における一つの方法になります。

相続放棄の決定

ただし相続放棄は、未成年者が自らの意思で行えるのかといえばそうではありません。
この場合も特別代理人を選任した上で、相続放棄を決定しなければなりません。

仮に父親が亡くなり、母親と子供が相続放棄を決断したとします。
この場合には、特別代理人を選任する必要はありません。
そもそも未成年者の法定代理人に親がなれない理由は、利益相反行為と呼ばれるものがあるからです。

先ほども申し上げたように、親が利益を得るために子供に圧力をかけ、親の方が多くの財産を受け取れるように仕向けたりすることができないようにするためです。

マイナスの財産となれば、そこに相反行為はまず存在しません。
そのため、マイナスの財産、借金などを相続放棄するのであれば、その場合には親が代理人として手続きをすることができるのです。

もちろんマイナスの財産の相続だったとしても、場合によっては相続人との間で意見が分かれることもあるでしょう。
父親が亡くなった場合に、母親は遺産相続の放棄をしたいと思っていても、子供は相続を放棄したくないと思っていることもあるかもしれません。

そのような場合、家族にとってとても重要な決定ですので、親子で話が食い違ったままというわけにはいきません。

そのため専門家に相談をして、遺産相続すべきか、相続を放棄するのかを十分に考えて決断しなければなりません。