もし自分に万が一のことがあった場合、延命措置はどうするのか、お葬式やお墓はどうしたいのかなど、具体的な希望を家族に前もって伝えておく「終活」が注目を集めています。
今の時代を生きる人々の意識変化によって、そうした人が増えたと思われます。

では、どのような理由や背景があるのでしょうか?

終活がブーム化した理由には一人暮らしの増加がある

終活ブームは、一人暮らしの高齢者が増加していることと無関係ではありません。その理由としては、子供との同居世帯が減少したことや、未婚や離婚が珍しくない世の中になったこともあり、自然と一人暮らしの高齢者が増えたと考えられます。

厚生労働省の国民生活基礎調査によれば、65歳以上の高齢者がいる世帯数は2013年で44.7%となり、そのうちの20.3%は一人暮らしです。

一人暮らしの高齢者の日々の生活では、さまざまな不安が募ります。

  • 頼れる人がそばにいない
  • 病気などの健康不安
  • 老化によりできないことが増える
  • 老後の資金不足
  • 防犯対策

こうした日々の不安が、一人暮らしの高齢者を自然と終活へ向かわせていると考えられます。一人暮らしだと自分の最後も自分で決めておく必要があり、その延長として、自分が納得のいくお葬式やお墓を望み、相続も自分の希望を通したいと考えるようになったのかもしれません。

かつては、子どもが親の面倒を見ることが当たり前で、お葬式のやり方も形式が決まっていました。しかし現代では、自分の意思をしっかり伝えて、納得できる最後を迎えたいと考える人が増えています。

少子高齢化により家族の構成が変化したことで、高齢者の考え方に変化が訪れたのが、終活ブームの引き金になったと言えそうです。

時代の流れによる祭壇、お仏壇、お墓の変化

仏壇

昔は家族が亡くなると、できるだけ立派な祭壇や仏壇に祀ったり、大きなお墓に入れてあげることが供養だと考えられていました。しかし、最近ではそれも縮小傾向にあります。
少人数の葬儀に向いているシンプルな祭壇プランや、現代仏壇と呼ばれる卓上型の仏壇が好まれるようになっています。また、お墓もシンプルな石碑風のものは特に人気があるようです。

マンションへの設置といった現代の住宅事情による影響もありますが、葬儀自体が縮小化したことで、「こうしたい」という自分の希望を叶えやすくなったことは間違いありません。そして、その背景には一人暮らしの高齢者の増加も関係していると言えます。

終活では家族へ感謝の気持ちを伝えることができる

終活を行うのは、自分だけでなく、残された家族のためでもあります。親が子どもを思いやる気持ち、家族の負担を軽減してあげたいという思いやりが、終活を始めるきっかけになります。

例えば、自分に万が一のことがあった時、遺産相続のトラブルを回避できるように、事前に財産の整理や処分をしておき、残された家族の手間にならないようにするのも、終活を始める大きな動機になります。

そして、これまでの人生を見つめ直し、家族に伝えたいことをまとめ、自分の正直な気持ちを遺言書やエンディングノートに記しておくことで、残された家族に「お金では買えない大切な宝物」を残すことができるのです。

また、終活をすることによって、残された時間にすべきことがはっきりし、家族とより良い時間を過ごすためのきっかけにもなります。それは自分にとっても、家族にとっても嬉しいことでしょう。

自分の意思を反映した葬儀へ変化

自分らしい葬儀をしたいというだけでなく、親族への負担を軽減したいなどの理由で、生前に自分の葬儀について具体的な方法を指定するようになったところから、終活はブーム化したと言われています。

また、葬儀に対する日本国民の認識が変化した理由のひとつに、天皇皇后両陛下がご自身の葬儀を土葬から火葬に変更するご意向を示されたことがあります。これにより、国民の中で「葬儀に対する意思は尊重すべき」という傾向が強まったと言えます。

かつての慣習を守るよりも、自分の希望を通そうとする時代の変化が、終活を普及させているのでしょう。

終活ブームと葬儀ビジネスの関係

終活

終活ブームの到来により、葬儀ビジネス業界も活性を迎えています。「シンプルセット葬儀プラン」、「安心価格でのご葬儀」、「葬儀保険で備え万全」など、さまざまなコピーを目にするようになりました。

そして、それに呼応するように、葬儀の形態も多様化しています。例えば、一般葬、家族葬、お別れ会、密葬、音楽葬、信仰宗教葬、無宗教葬など、葬儀のスタイルを自由に選択できるのも最近の傾向です。

また、葬儀をする場所も自宅、寺院、教会、会館、斎場など、故人の意思を尊重できるようになっています。
故人の気持ちがしっかりと伝わる葬儀は遺族に、より深い印象を与えることでしょう。

終活セミナーの会場は満員も珍しくない

最近耳にする「終活セミナー」は、自分に万が一のことがあった際、家族に迷惑がかからない方法を学ぶ講座です。民間企業や地方自治体が一般市民向けに行っており、終活を始めたいが何をしたらいいのかわからないという方が多く参加されています。満員での開催になることも珍しくありません。

セミナーの内容は、エンディングノートの活用方法、相続問題で揉めないための知識、葬儀やお墓の種類、必要な費用、葬儀社との連携、死亡後の流れなどについて、わかりやすく学ぶことができます。

終活が人生の最後の迎え方を変える

一人暮らしの高齢者の増加、自分の意思を反映した葬儀をしたいという気持ち、残された家族が困らないための準備など、さまざまな理由が多くの人を終活へと向かわせ、時代の流れと共に広く知られるようになりました。

心のこもった終活は、自分が納得のいく最後を迎えられるだけでなく、家族にも温かな感情を残します。そうした終活が普及していけば、人生の最後の迎え方の幅も広がっていきそうですね。