引用元:フジテレビ
磯野家の主である「波平」が亡くなった場合、どのように遺産の分配がなされるかを徹底解説させて頂きます。
被相続人が遺産の分配を指定できる内容
亡くなった波平が遺言を残しており、相続人それぞれの相続分を残している場合は基本的にその通りに分配されます。
遺言により、以下の項目を指定することができます。
財産処分の指定
配偶者や子などの法定相続人以外にも財産を相続させることができます。
磯野家の場合、例えば法定相続人に当たらない孫「タラオ」やマスオの同僚である「アナゴ」にも遺言で指定しておけば相続させることができるのです。
相続人の廃除
被相続人が相続人から侮辱や虐待などを受けており、遺産を相続させたくない場合、遺言にその旨を記して相続権を取り上げることができます。
磯野家の例で言いますと、相続人である妻・フネが被相続人である波平に日常的に暴力を振るっており、波平が「フネに相続させない」と遺言に記しますと相続人から外すことができるということです。
また民法第891条により以下の条件に当てはまる場合、相続人は遺産相続をすることができません。
- 故意に被相続人や他の相続人を死に至らしめるまたはそうしようとして刑に処せられた場合
- 被相続人が殺害されたと知りながら告発しなかった場合
- 被相続人の遺言の変更などを詐欺や恐喝によって妨げた場合
- 被相続人の相続に関する遺言を破棄、偽造、変造した場合
内縁の妻や子に対しての相続分
波平に愛人との間に子(隠し子)がいる場合、遺言にて認知すれば「子」として相続分を得ることができます。
遺言の執行に関して
被相続人は、遺言の執行に関して遺言にて指定できます。
遺言執行人の指定
被相続人の預貯金や土地を相続する場合、その名義を変更しなければなりませんが、その手続きを行う遺言執行人を遺言により指定することが可能です。
後継人の指定
例えば妻のフネや子のサザエが既に他界しており、波平が亡くなり相続するのが子であるカツオ、ワカメのみの未成年である場合、財産管理を第三者の後継人に任せることを遺言で指定できます。
担保責任の指定
遺言に欠陥があった場合、その担保責任者や負担割合を指定できます。
遺産分割の禁止
遺産分割の話し合いに折り合いがつかないことが予想される場合、被相続人はご自分が亡くなり相続が開始されてから5年間、遺産分割を禁止することを遺言書にて指定できます。
相続人同士をクールダウンさせる目的で、遺言書に遺産分割の禁止を盛り込む方もいらっしゃいます。
注意!遺留分の指定はできない
民法第902条により遺言書に相続の指定がある場合でも、一定以上の相続分(遺留分)を指定することは出来ません。
磯野家の場合で言いますと、波平が遺言書で「孫のタラオに全財産を相続させる」と指定したとしても、遺留分については妻のフネや子のサザエ、カツオ、ワカメに渡ることになります。
また遺言書の書き方などによっては遺言書そのものが無効になってしまうこともありますので、注意が必要です。
遺言書がない場合の遺産分配と手続きの流れ
遺言書がない場合にどのように財産を分配するか、遺留分や分配の流れを解説します。
1. 遺産相続の対象となる財産等を確認する
遺産分配に当たり、まずは遺産相続の対象となる財産を確認します。
遺産相続の対象となる財産は以下の通りです。
不動産
実勢価格、固定資産税評価額、路線価格といった算出基準により不動産価値を割り出します。
株式などの有価証券
株式の価値はなくなった日の終値の価格やその月の平均価格などを元に算出します。
- 銀行預金
- 貴金属
- 自動車
- 生命保険
- 借金
2. 相続人を確定する
遺言がない場合は、法定相続人がそれぞれの相続分を引き継ぎます。
磯野家の場合、法定相続人は妻のフネ、子のサザエ、カツオ、ワカメの4人です。それぞれの相続分の割合は以下の通りになります。
- 妻のフネ→財産の1/2
- 子のサザエ、カツオ、ワカメ→財産の1/2を三人で分ける(一人1/6)
もし子のサザエ、カツオ、ワカメが既に亡くなっている場合、相続の割合は下記のように変化します。
- 妻のフネ→財産の2/3
- 波平の両親→財産の1/3を両親二人で分ける(一人1/6)
子のサザエ、カツオ、ワカメと波平の両親が亡くなっている場合の相続人と相続分は以下の通りです。
- 妻のフネ→財産の3/4
- 波平の兄弟→兄弟は兄の海平だけなので、残りの1/4を全て相続する
このように、法定相続人の状況によって、それぞれ相続分が異なるのです。
3. 相続人同士で遺産分割協議を行う
法定相続分についてご紹介しましたが、ほとんどの場合、この割合通りに分割するのは難しいのが現状です。
なぜなら遺産として残されているのは現金のように分けやすい物だけでなく、土地や建物などの不動産などが含まれるからです。
こうした分割するのが難しい遺産については、どのように分けるかを「遺産分割会議」にて話し合います。
これにより土地や建物などを誰が相続するか、他の相続人は何を相続するかを決定するのです。
4. 遺産分割協議書を作成する
遺産分割会議にて遺産の分配方法が決定した場合、「遺産分割協議書」を作成することになります。
この遺産分割協議書がなければ、遺産である不動産の名義変更や銀行の引継ぎなどを行うことができませんので、正確に作成する必要があります。
また一度成立すると、基本的にやり直しはききませんので、慎重に進めてください。
遺産分割協議書を作成する際、以下の点には特に注意しましょう。
- 被相続人の氏名、住所、亡くなった日付
- 遺産分割会議を行い、全員がその分割や取得に合意した旨
- 相続人と相続する財産
不動産であれば登記事項証明書に記されている内容、銀行口座であれば口座番号まで詳細を記載します。
- 相続人全員の署名、捺印
- 全員の印鑑証明
5. 遺産分割協議で決まらない場合は遺産分割調停を行う
遺産相続は、相続人全員が納得しなければ分割が成立しないため、時間がかかってしまうことが多いです。
どうしても遺産分割協議で話がまとまらない場合は、家庭裁判所にて遺産分割調停や審判の手続きを行います。
この調停では各相続人から分割方法や割合の希望を聴取し、提出された資料をもとに分割方法の決定・合意を目指します。
調停委員が聴取に当たりますが、この時要望などを礼儀正しく丁寧に伝えることが遺産分割調停をスムーズかつ有利に進めるポイントです。
調停は基本的に相続人本人が参加しますが、代理人弁護士を同伴することもできます。
6. 遺産分割調停で決まらない場合は遺産分割審判を行う
調停が不成立になった場合、自動的に遺産分割裁判が行われますので調停員の指示に従い、手続きなどを行いましょう。
こんな場合は弁護士に相談するのがおすすめ!
このように、遺産の分配は相続人や相続財産により異なります。
もし相続に関して以下のようなトラブルが発生した場合は、弁護士に相談することをおすすめします。
- 相続をどのように分けるかでもめている
- 財産を使い込んでいる相続人がいる
- 相続人が多い
- 他の相続人に比べ、相続分が明らかに少ない
- 他の相続人が弁護士をつけている
- 相続放棄を希望している
無料相談を行っている弁護士事務所は沢山ありますので、トラブルが発生しそうな場合や発生した場合は、できるだけ早く相談すると良いでしょう。