2017年以前は、海外に5年間居住している場合、海外にあるすべての財産が課税対象になりませんでした。
そのため、課税を免れる目的で海外に居住するケースもありました。
しかし、2017年の税制改正で、相続税に対する課税の内容が変化しました。

どの部分がどのように変化したのか、わかりやすく解説します!

居住期間5年から2倍の10年!課税対象を免れにくくなった

2017年の税制改正で最も変化した点は、相続税制が「5年ルール」から「10年ルール」に変更になったことです。

「5年ルール」とは、海外に5年以上居住した場合、海外にあるすべての資産に対し、相続税や贈与税が日本国内では課せられないという内容です。

ここで、日本の相続税を世界の比率と比較してみます。

日本は55%なのに対し、

  • ドイツは45%
  • フランスやイギリスは40%
  • アメリカ、中国、オーストラリア、スイス、香港、マレーシア、タイなど一部の国では0%

というようになっており、相続税が課せられない国までも存在します。

相続税や贈与税は、当然ですが財産が大きければ大きいほど課せられる税金も高額になってしまいます。

以前のルールは、5年間海外移住をすれば相続税、贈与税の納税を免れることができる内容でした。
そのため、富裕層が多額の相続税を免れようとして財産を海外で所有するケースも多かったのです。
しかし、2017年の税制改正により居住期間は10年にまで引き延ばされ、納税を免れるためのハードルが高くなりました。

10年間海外移住するとなると、不慣れな土地での生活や、親族、知人と疎遠になるなどのリスクが生じます。
そのため、海外居住によって納税を免れようとする富裕層は、税制改正前と比較すると格段に少なくなるでしょう。

2000年以前は縛りなしの非課税だった

2000年以前は、そもそも「5年以上の海外移住者だけ非課税になる」といった縛りはありませんでした。
国外居住者ならば、どんなに財産や資産があっても、相続のタイミングで海外に居住し、海外に財産があれば非課税となっていたのです。

しかし、このような「非課税にするための裏技」が問題視され、2000年から規制のハードルを上げる策が始まったのです。

高層タワーマンションの固定資産税がアップ!

タワマン

また、高さが60m以上・20階建て以上ある新築タワーマンションの固定資産税も見直されました。このようなタワーマンションにおける、高層階部分の固定資産税が増税されたのです。
これにより、例えば40階部分は1階に比べて固定資産税が1割高くなる計算となります。

今までは低層部と高層部の床面積が同じ場合、同額の固定資産税でした。
そのため、富裕層が相続税対策のために、高額で売却できる高層部を購入するケースが多かったのです。

低層部と高層部の固定資産税は同じにもかかわらず、高層部の売価のほうが高ければ、もちろんお得感がありますよね。

しかし、税制改正により高層部の固定資産税が上がったため、たとえ高額で売却できたとしても固定資産税の負担が大きくのしかかります。
誰かに贈与したいと思っているタイミングで固定資産税の評価額が上がり、結果的に相続税も高くなってしまう可能性も考えられるのです。

固定資産税評価額が影響する相続税もさらに増税される?

タワーマンションやその他の建物の相続税を計算する際は、その建物の評価額を算出する必要があります。建物の場合は、「固定資産税評価額」がそのまま相続税を計算する際に用いる評価額となります。
相続税は、遺産の総額から基礎控除を除いた額が課税されます。そのため、基礎控除の範囲を超える高額な建物を相続する場合、固定資産税の評価額は重要なポイントです。

また、固定資産税評価額が影響する相続税、贈与税に関しては、2018年度の税制改正により、さらに増税などが検討される見通しです。
これはタワーマンションを購入し、相続に有利な条件を揃える「節税対策」を防ぐためです。

2017年の税制改正によりタワーマンションの高層部における固定資産税が見直され、相続税にも影響が出る可能性もあることを覚えておきましょう。

日本で就労する外国人が死亡した場合の相続税も変更された

外国人就労者

日本で家族とともに暮らし、就労していた家族が死亡した場合、2017年以前は本国にある財産には日本の相続税が課せられていました。
しかし、この内容が「高度外国人材の受け入れに影響がある」と問題視され、在留資格がある外国人の相続人に対しては「国外財産についてのみ、課税対象にならない」内容に変更されました。

高度外国人材は、国外に多額の資産や財産を保有しているケースが多いです。相続税が世界一高い日本で高度外国人材が死亡すると金銭的なリスクが高いため、日本に渡り住むのをあきらめざるを得ない状況も多かったと考えられます。しかし、相続課税のリスクがなくなったことで、高度外国人材にとって日本に住むことのプラス要因が増えました。

また、日本企業にとっても高度外国人材からメリットを得られる機会が増えるため、様々な面において良い効果が期待できる改正ですね。

良質な外国人人材を受け入れやすくなり、日本産業の効率性がさらに高まり、市場の発展につながる要因になるのは間違いありません。

相続人になる予定があるなら税制改正の内容に注目

2017年の税制改正で相続税に係る内容が見直され、相続税に課せられる条件が大きく変更されました。
負担が大きくなるケースもありますが、相続税に対する条件が軽減、平等化されたイメージが強いですね。

今後、相続人になる予定がある場合や、経営を引き継ぐ予定がある相続人は、ぜひとも2017年の税制改正の内容に注目してもらいたいです。