「相続」と聞くと、金銭を譲り受けるといったイメージを持つ人が多いのではないでしょうか?
しかし、実際の相続は内容が様々であり、債券から債務までを含めた形で進行することになります。
相続とは包括的なものですので、プラス財産だけの相続はできません。
マイナス財産を相続しないためには、相続自体を放棄することになります。

そのときに必要となるのが、相続放棄申述受理証明書です。その必要性と交付方法をチェックしていきましょう。

相続放棄申述受理証明書の必要性とは?

相続の放棄自体は自由に行えるのですが、その意志にきちんとした効力を持たせ外部に示すためにはどうしたらいいのでしょうか?
相続放棄申述受理証明書は、そのために必要な書類だと言えます。
まずは、相続放棄の際に発行すべきこの証明書の必要性をチェックしましょう。

相続放棄は公的機関に認められて確実になる

相続放棄申述受理証明書は、家庭裁判所で発行されます。
裁判所からの証明書ですので、その効力は大きく、逆にこれがなければ相続放棄は単なる「口約束」に過ぎないことになります。
そういう意味において、この証明書が公的機関から発行されることに大きな意味があるのです。

相続意思がある側にとっては権利の確保に役立つ

また、公的機関発行の重要性を考えた場合、相続放棄申述受理証明書は、相続意思がある側にとっても大きな意味を持ちます。
なぜなら、この証明書を申請しないことで、逆説的に相続権利の確保を公的機関が証明してくれることになるからです。
このように、相続放棄申述受理証明書の存在は、権利を放棄する側にも確保する側にも同じく効力があると言えます。

相続放棄申述受理証明書の交付方法は?

それでは、相続放棄申述受理証明書を交付してもらうには、どのような手続きが必要なのでしょうか?
この証明書の取得するには、財産放棄という事の重大さから、一定のプロセスを踏む必要があるのです。

家庭裁判所への放棄申述だけではダメ

相続放棄申述受理証明書の交付申請を行うには、まず相続放棄希望者本人が「相続放棄申述」を家庭裁判所に行うことから始まります。
その後、裁判所から申述の受理通知が来ますが、この際に証明書発行のための書類も同封されてきます。
つまり、証明書の発行を進めてもらうためには、家庭裁判所へ申述するだけではなく、受理後に再度申請をしなければならないのです。

相続放棄申述受理証明書の交付に必要な書類は?

相続放棄申述受理証明書の交付を受けるには、相続放棄者本人が申請するのであれば、申述受理の通知控えだけで交付を受けることができます。
しかし、この証明書を相続放棄者以外の相続人が申請する場合はどうでしょうか?

各相続人の戸籍謄本の提出が必要

相続放棄者ではない相続人からの証明書申請になると、各相続人の戸籍謄本の提出が求められます。
また、申請者が法人の場合は、法人の登記簿謄本の提出が求められます。
申請を行う側の戸籍や登記簿謄本は、発行後3か月以内の新しいものが必要です。

相続者の利害関係を示す書類や相関図が必要な場合も

また、相続放棄者以外が申請する場合、相続放棄者との利害関係を示す書類の提出も必要です。
相続放棄者との相関図の添付が必要になることもあり、第三者からの申請には慎重に対応しているのがわかります。
この利害関係を示す書類についても、契約書などの正式な書類であることが求められます。

相続放棄申述受理証明書に絡むトラブルとは?

相続放棄トラブル
最後に、この相続放棄申述受理証明書に関するトラブルについてお話していきましょう。
相続放棄申述受理証明書は、放棄する側にはもちろん、放棄される側にとっても重要な書類です。
しかし、両者のコミュニケーションが上手くいかないことで、トラブルが生じるケースがあります。

相続放棄者が相続希望者に証明書を提供しないケース

本来、相続放棄をした相続資格者は、相続放棄申述受理証明書を速やかに取得して、相続希望者に当該証明書を提供することになっています。
しかし、時としてそれをしない相続放棄者がいます。
そうなると、相続手続き全体の処理が遅延してしまうため、相続希望者が第三者として家庭裁判所に申請する手続きする必要が出てきます。

相続放棄申述受理証明書を相続希望者が紛失するケース

逆に、相続希望者に落ち度があるトラブルもあります。
相続放棄者から証明書を受け取った後に紛失してしまうというケースです。
この場合、相続放棄者が確実に相続希望者に渡したにも関わらず、「受け取っていない」と主張されることがあるのです。
こうしたことが起きないように、相続放棄者は記録が残る方法で送付するなどしておけば、紛失しても責任を問われることはありません。

相続放棄は相続資格者の権利ですが、大きな金額が絡むケースもあります。正しい手順を踏みながら慎重に進めることが大切と言えるでしょう。