相続権譲渡というのは、その名の通り相続権を第三者に譲渡することです。
あまり一般的に行われていることではありませんが、相続権を譲渡することによって、相続問題に巻き込まれずに済むというメリットは確かにあります。

では実際に相続権を譲渡したい場合、どのような方法と手順で行えばよいのでしょうか?

相続権譲渡の方法

相続権譲渡に関しては、遺産分割を行う前に必ず行わなければいけません。
このタイミングさえ間違えなければ、それ以外に特別な方法や形式が決められているわけではなく、法的な規定も特にありません。

ただし、第三者が相続人となる得る非常に重要な行為ですので、後になってトラブル発生を防ぐためにも、契約書面を残しておいた方がよいでしょう。

相続分譲渡契約書

有償なのか無償なのか関係なく、相続権を譲渡したことを証明する「相続分譲渡契約書」などの書面を作成することをおすすめします。

両当事者が書面に署名し、実印を押印。さらに印鑑証明書も一緒に保管しておくとより安心です。

さらに相続財産の中にもし不動産が含まれている場合においては、所有権移転の登記手続きを行わなければいけないため、戸籍などの書類も相続分譲渡契約書を作成する時にはきちんと準備しておくことが大切です。

相続権譲渡の手続き

相続権の譲渡は、遺産分割前に行わなければいけないことはご理解いただけたかと思いますが、他にも相続権譲渡の手続きで知っておきたいことをいくつかご紹介します。

共同相続人の承認は不要

相続人が複数人存在する場合、その中の一人が相続権を譲渡するとなったら、「他の相続人の承諾を得なければいけない」と考えてしまうかもしれません。

しかし、相続権譲渡に共同相続人の承認は不要です。当事者のみで契約が交わされれば、それで相続権譲渡が成立します。

口頭での告知だけでも譲渡可能

先程、相続権譲渡には「相続分譲渡契約書を作成すること」をおすすめしましたが、実は口頭だけでも告知は可能です。

民法第91条では「任意規定と異なる意思表示」が定められており、これは口約束でも法律的に契約が有効になるという意味です。
とはいえ、後日のトラブル回避や、相続登記などで必要になってくることから、やはり契約書はきちんと書面にして残しておくことをおすすめします。

共同相続人への通知も自由

「特定の相続人から相続権を譲渡された」という旨を、他の相続人へ通知するべきなのかどうかは考えが分かれるところですが、法的にそういった義務は特に定められていません。

ただし、一般的には通知した方が良いという見解が多いです。
もし共同相続人へ通知をする場合には、配達証明付きの内容証明郵便を利用するとよいでしょう。

1ヶ月以内であれば相続権譲渡は取り消せる

取り消す
相続権の譲渡が決まり、完全に遺産分割が終わった後でも、譲渡した相続人はその譲渡を取り消すことが出来ます。
これも民法で定められていることで、「譲渡権の取り戻し」と呼ばれています。

相続権を取り戻すためには、譲渡時にかかった費用、及び相続分の価額を支払うことになります。
この際、他の相続人から承諾を得る必要は無く、単独でも行使することが出来ます。

ただし相続権の取り消しには期限が決められており、譲渡された時から一ヶ月以内に行使しなければいけません。

この期間を超過してしまうと、相続権を取り戻すことが出来なくなりますのでご注意ください。

 

以上のように、相続権譲渡には特に決まった形式や手順があるわけではありません。ただし、相続問題というのはいつの時代になっても常に頭を抱える大きな悩みであり、場合によっては長い裁判沙汰になってしまうケースもあります。無用なトラブルを避けるためにも、相続権の譲渡は慎重に、また誤解のないように行いましょう。