遺言書を見つけたら開封しないで「検認手続き」を!

遺言書は普通のご家庭でも見つかることがある

大切なご家族が亡くなられた後、思いもよらずに遺言書が見つかることがあります。最近ではテレビやインターネットなどで遺言書を残すことの大切さが報じられるようになり、遺産がそれほど多くなくても、また家族が円満だとしても、遺言を残す方が増えてきているそうです。

封印された遺言書を見つけたら開けないで!

遺言書が見つかると、つい中身を確認したくなりますが、封印された遺言書を「検認手続き」をする前に開封することは民法で禁止されています。遺言書の内容が気に入らないからと内容を改ざんされてしまったり、遺言書自体が破棄されてしまったりするリスクがあるからです。

遺言書を勝手に開封したり、「検認手続き」をせずに遺言を執行したりすると、5万円以下の過料が課せられることがありますので注意しましょう。ただし、ここでいう封印とは、単なる糊付けでの封ではなく、封じ目に印鑑などで印を付けている場合になります。

遺言書が封印されていなくても「検認手続き」は必要

封印されていない遺言書なら、内容を見られますし、相続人で話し合いもできるので、「検認手続き」はいらないと考える方もいらっしゃるようですが、それは間違いです。「検認手続き」をしていない遺言書には執行力がありません。「検認手続き」をしていないと、預貯金の名義変更も出来ませんし、遺産に不動産が含まれていた場合などには登記手続きをすることも出来ません。

遺言書の「検認手続き」に関する重要な4つのポイント

1・公正証書遺言以外は必ず「検認手続き」が必要

遺言書には3種類あります。公正証書遺言の場合には公証人に作成してもらい、原本は公証役場で保存しますので、「検認手続き」の必要はありません。自筆証書遺言と秘密証書遺言については第3者が内容を確認していませんので「検認手続き」が必要となります。

2・遺言書の存在と内容を明確にすることが「検認手続き」の目的

「検認手続き」の目的は、遺言書が有効かを判断することではなく、遺言書の形状、日付、署名などを明確にして、遺言書の偽造や変造を防止することです。遺言書の存在を相続人などに知らせる目的も併せ持ちます。

3.遺言書は「検認手続き」後も無効になることがある

「検認手続き」の目的は遺言書の存在と内容を明らかにすることですので、遺言書の形式に誤りがあったり押印がないなどの場合、「検認手続き」後に遺言書が無効になることもあり得ます。

4.「検認手続き」中も他の相続手続きの申告期限は延期されない

遺言書の「検認」の申し立てをしてから実際の「検認手続き」ができるまでは2週間以上要することがあるようです。「検認手続き」の為の書類を用意する手間もありますので、遺言書を見つけたらすぐに行動した方がよいでしょう。
「検認手続き」をしている間も、相続放棄の期限(3ヶ月)や相続税納付期限(10ヶ月)は原則として延期されないので同時進行が必要なことにも注意しましょう。

「検認手続き」の流れ

検認手続の流れ

  1. 必要書類を添えて家庭裁判所に遺言書の「検認」の申し立てをします。
  2. 相続人への検認日が郵送で通知されます。
  3. 検認日に申立人が家庭裁判所で「検認手続き」をします。他の相続人の立会は必須ではありません。
  4. 検認済証明書の申請をします。検認済証明書付きの遺言書があれば、不動産の名義変更や預貯金の名義変更が行えます。

「検認手続き」に必要な書類は慣れていないと取得が大変なことも

検認手続には、下記の書類が必要になります。

遺言書

封印がされているものは未開封のまま、封印のないものはそのままで構いません。

被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本

被相続人の本籍地で申請します。転籍が多い場合には必要な謄本が多くなるため、慣れていないと取得に手こずるかも知れません。市区町村役場の人に相続手続きをしていることを伝えて相談すれば、どのような謄本が必要になるか教えてくれますので、2度手間などを防ぐためにも遠慮せずに相談しましょう。

お住いの市区町村役場で申請できる3つの書類

以下のものはお住いの市区町村役場で申請できますので、忘れずに用意しましょう。
被相続人の住民票の除票(死亡時の住民地で作成される)
世帯全員の戸籍謄本(世帯全員分)
世帯全員の住民票(本籍や続柄全ての記載があるものを世帯全員分)

「検認手続き」には時間がかかりますので、遺言書をみつけたら開封せず、すぐに手続きの準備を始めましょう。手続き自体は誰でもできますし、市町村役場でも相談にのってくれます。

どうしても提出書類を準備する時間がない場合や、金額が大きい場合、他の相続人との調整を誰かにして欲しい場合などには、弁護士や司法書士などの専門家に相談することを検討してもよいでしょう。
故人の思いのつまった遺言書を正しく扱って、スムーズに相続手続きができるといいですね。