相続登記には期限がないからしなくてもいい?

相続登記には法律上の期限がありません。相続登記をしなくても何も罰則などはないのです。ただし、相続登記をしないままだと、将来的に相続人同士で揉めてしまうなどのデメリットがあります。

遺産分割協議書を作成したら、速やかに相続登記を

特に遺産分割協議で通常の法定相続分とは異なる相続分の不動産を取得した時には必ず相続登記をしましょう。もし相続登記をしないままだと、あとで他の相続人にその不動産の所有権を主張されても対抗できません。不動産登記は速いもの勝ちなので、その不動産を相続しない予定だった他の相続人に登記を先にされてしまった、などの信じられないような問題も起こりうるのです。
また、遺産分割協議書にも有効期限がありません。しかし、作成から時間が経つと相続人の誰かの住所が変わったり、実印が変わったりして再度用意しないといけない書類がでてきてしまう可能性があります。

相続登記をしないと不動産売却や不動産を担保とした借り入れが出来ない

相続登記が完了していないと、その不動産の売却や不動産を担保とした借り入れが出来ません。借り入れをする際などにあわてて相続登記をはじめても、時間がかかって間に合わない!ということも考えられます。

相続登記をしないまま相続人が死亡してしまった!

相続人が相続登記をしないまま死亡した場合には、更に相続人が増えて相続手続きが複雑になります。例えば子供が2人(長男、次男)いる父親が死亡した場合に相続登記をしないままでいると、その後もし、長男が亡くなった場合には、次男と長男の子供の全員で遺産分割協議をしなければいけません。こうして第2第3の相続が増え、複雑になればなるほど相続登記は進まず、所有者が不明な土地が増えてしまう原因となるのです。

相続登記を自分でやるには時間と労力が必要

速やかに行いたい相続登記ですが、手続きには必要な書類が沢山あり、時間も手間もかかります。他の相続人が非協力的な場合などは忍耐力も必要です。
戸籍謄本を取るには平日に遠方の役所に出向く必要があったり、郵送で取り寄せるにしても当然時間がかかります。しかも、ただでさえ馴染みのない土地の地名はわかりにくいのに、古い戸籍謄本などは手書きで書かれていたり、旧字体だったりすることもあり、判別が大変です。
更に、遺産分割協議書、贈与契約書、財産分与契約書などの法的書類を作成するのは慣れていないと難しい作業でしょう。

相続登記の流れとポイント

ポイント
では相続登記を実際に行うには、何をすればよいのでしょう?流れとポイントを解説します。

遺産分割協議で相続する人を決める

相続人全員で話し合い、誰の名義にするか決めることです。全員同じ場所に居合わせなくても、電話や手紙やメールで話し合いが出来ればよいとされています。相続人のうちの1人が作った遺産分割協議書の案を他の人が了承する形でも大丈夫です。

遺産分割協議書を作成する

遺産分割協議書には必ず相続人全員で協議したという文言を入れましょう。土地建物などの不動産について記載する場合には「登記事項証明書」を書き写します。

不動産の名義変更の申請(相続登記)

法務局で相続登記手続きの申請をします。

相続登記に必要な書類と取得方法

  1. 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まですべて):被相続人の生まれた時から亡くなるまでの戸籍調査が必要です。亡くなった時の住所からたどっていきます。必要な戸籍が遠方の役所に点在する場合もありますので、郵送での申請もできます。郵送で申請する場合には申請に必要な書類に不備がないように注意し、念のため前の住所地で取った謄本のコピーを添えるなどの工夫をして時間のロスを少なくしましょう。
  2. 被相続人の住民票の除票(死亡時の市区町村役場)
  3. 相続人全員の印鑑証明書
  4. 相続人全員の住民票
  5. 不動産の固定資産評価証明書(市区町村役場)
  6. 不動産の全部事項証明書(法務局):どこの法務局でも取得できます。
  7. 遺産分割協議書
  8. 相続登記の申請書:A4サイズの白紙に書いていきますが、法務局のホームページに記載例やひな形がありますので参考にしましょう。

*法務省によると2017年5月から相続に必要な戸籍書類一式を登記所に持っていくと無料で証明書を発行してくれるようになるそうです。相続手続きの簡素化を図る目的ですが、最初に戸籍書類を用意する手間はなくなりません。あくまで一度戸籍書類を用意して証明書に変えておけば、それ以降は証明書で代用できるということです。複数の銀行などに戸籍書類を提出しなければいけない場合などは助かりますね。

書類作成は専門家に依頼するのがおすすめ

法的書類は司法書士などの専門家に作成してもらうことも検討しましょう。相続が高額な場合や、複雑な場合、他の相続人の協力が得にくい場合にも専門家に相談したいですね。遺産分割の方法によっては特例を適用でき、節税ができたりしますし、万が一遺産分割協議のやり直しなどになった場合には余計な税金を支払うはめになるかも知れませんので注意が必要です。
専門家に頼む場合でもなるべく費用を抑えたい場合には、自分で準備できる書類は準備しておきましょう。
将来の子供達、孫達のためにも速やかに相続登記を済ませたいですね。