相続財産も理想的なモノばかりとは限りません。時として相続すると損をしてしまうこともあります。
一般的な相続の場合、あらゆる財産を受け継ぐことを求められますが、債務を受け入れなければならないとなると躊躇してしまいます。
このような場合に相続財産を受け取らないことを「相続放棄」といいます。今回は相続放棄の手続き方法と注意点について説明いたします。
相続放棄には家庭裁判所への申し立てと受理証明書の申請が必要
まず、相続放棄の手順を見ていきましょう。相続放棄の手続きとは、相続人が自分から相続放棄の意思を明確に表して、公的に認めてもらう行為です。
つまり、「私は相続を放棄します」という声を挙げて、公式に認めてもらう必要があるのです。
相続放棄を進めるためには、まず家庭裁判所宛てに申し立てをすることから始まります。
この場合、「相続放棄申述書」という書類を提出することになります。この申し立てをしなければ、どんなに心の中で放棄すると思っていても、財産を放棄をしたとは見なされません。
相続放棄申述書が家庭裁判所に受理された場合、裁判所から相続放棄した相続人つまり申述者に対して「受理通知」が送られてきます。
しかし、受理通知を持っているだけでは申請したことになりません。この通知に同封されてくる書類を使って、相続放棄の証明になる「受理証明書」を申請する必要があります。
被相続人の戸籍除票と申述者の戸籍謄本を添付する
さて、相続放棄の手続きを進めるためには、提出すべき書類のことも知っておかなければいけません。
相続は突然発生することもあります。そのような場合、具体的な手続き方法を知っていれば、慌てないで済みます。
一般的に相続放棄のための申述書には、被相続人の戸籍除票が欠かせず、申述する相続人本人の戸籍謄本も一緒に添付しなければなりません。
他にも相続関係説明図の提出を求められる場合もあります。
相続放棄の費用は2,000円程度
次に、相続放棄手続きに掛かる費用ですが、基本的に1,000円以下の費用で放棄手続き自体は可能です。
しかし、手続きには被相続人や相続人の戸籍類が必要になり、1,000円ほどの追加は避けられません。
また、郵送にて書類を取り寄せたりする場合、郵便代(切手)などが数百円ほど別途追加で掛かってくるでしょう。
相続放棄の手続きを進める際に知っておきたい注意点
相続放棄の手続きを進めるにあたり、知らなかったせい手続きが面倒なことになったというケースもあります。ここでは、相続放棄手続きの前に確認しておきたい注意事項をご紹介しましょう。
相続放棄の手続きは相続開始後3か月内に進めること
相続放棄手続きは、原則として相続がスタートしてから3か月内に進めなければなりません。
これだと手続き期間がかなり短いというイメージを持たれるでしょうが、実際は放棄するべき原因(財産の中に借金があるなど)を知り得た時期から3か月以内と考えておけばよいでしょう。
相続債権者からの弁済請求に応じると相続放棄できなくなる
また、相続放棄について正しく手続きを行ったのに、結果的に相続放棄ができなかったというケースもあります。
これは手続き自体に問題はなくとも、放棄する前に相続債権者からの弁済請求に一部でも応じてしまったなどのパターンです。
つまり、何らかの経済行為を相続債権者宛てに行ってしまうと、財産を相続したと見なされてしまうのです。
相続放棄のメリットとデメリット
ここまで相続放棄の手続きの方法と注意点について説明してきましたが、相続放棄にはメリットともあればデメリットもあります。それぞれの例を覚えておきましょう。
マイナス財産を背負うリスクがなくなる
相続放棄ができることは、財産のうちのマイナス財産(借金)を相続しなくてよいことを意味しています。
もちろん、プラスの財産も同時に放棄しなければなりませんが、それまでの生活を脅かされるリスクはなくなるので、この点が最大のメリットと言っても良いでしょう。
相続放棄はどんな理由でも撤回できない
ただし、一旦相続放棄を行ってしまうと、その後どのような事情が発生したとしても、放棄撤回はできない仕組みになっています。
仮に相続放棄した後に別の大きな財産が見つかっても、権利を主張することは難しいです。これは他の相続人の権利を守るためだと言えます。
相続放棄をすると、マイナス財産を引き継がずに済みますが、プラス財産を受け取ることはできなくなります。また、放棄することで相続の優先順位が変わるなど、他の相続人に与える影響も大きいので、相続放棄をする場合はそうした事情を考慮した上で、慎重に行うようにしましょう。