相続で得られる財産の中には、処理に困るものもあります。借金などのマイナス財産はもちろんですが、汎用性の極めて低い不動産などもそうでしょう。
このような財産を相続すると、日常生活に支障をきたすケースもあり、相続人の中には「相続放棄」を選ぶ人も少なくありません。

相続放棄を進めるには、いくつか書類を準備する必要があります。ここでは4つのタイプに分けて、準備する書類とその集め方を解説します。

①申述に関する書類

相続放棄に必要な書類の1つ目は申述関に関するものです。ここで言う申述では、相続放棄に関する申述書そのものよりも、申述を進めて受理された後の書類の流れがメインとなります。どのような書類が、具体的にやり取りされるのでしょうか?

相続放棄申述受理通知書

まず、相続放棄を進めるには、基本的に相続放棄の意思を持つ相続人自らが、家庭裁判所に対して申述書を提出してその意思表示を行わなければなりません。

そして、その申述が裁判所に受理された場合、裁判所から「相続放棄申述受理通知書」が送付されて来ます。この通知書は公的書類としては使えませんが、下記の重要書類の申請資格となります。

相続放棄申述受理証明書

裁判所から「相続放棄申述受理通知書」が送付されてくると、そこに「相続放棄申述受理証明書」申請用紙も同封されて来ます。これに必要事項を記入して裁判所に返送すれば、この証明書が発行されるのです。

「相続放棄申述受理証明書」は、他の相続人が相続登記を進める際に必要となる書類なので、大変重要なものと言えるでしょう。

②個人情報に関する書類

2つ目の相続放棄に必要な書類ですが、手続きに必要な個人情報に関するものになります。

一般的に「相続放棄申述書」を家庭裁判所に提出する場合は、相続関係者の正確な情報がわかる書類を準備しなければなりません。

被相続人に関する住民票除票

必要なのは被相続人に関する情報です。相続放棄申述では、誰が所有する財産の相続を放棄するのかということを記載してそれを証明しなければなりません。
所有者は被相続人ですが既に死亡していますので、死亡しているという公式情報が必要になります。この場合、被相続人が住んでいた自治体の役所にて、「住民票除票」を取得して添付するのです。

相続人に関する戸籍謄本

また、当然ながら申述人つまり相続人の情報も相続放棄申述書には書く必要があります。この場合は「戸籍謄本」を添付しなければなりません。
被相続人の書類が取れる場所と相続人の書類が取れる役所が異なることもあるので注意したいところです。

③緊急時に使用する書類

書類
さて、相続放棄において重要な「相続放棄申述受理証明書」ですが、時として放棄希望者がなかなか書類を提出しないことがあります。
そのままだと相続登記が進まないので、他の相続人主導で相続放棄の手続きを進めることもできます。そのために必要な書類をご説明します。

遺産相続分割協議書

まず、放棄者以外の相続人が「相続放棄申述受理証明書」を入手するためには、遺産分割を相続人同士で協議した結果である「遺産相続分割協議書」の提出が求められます。
これを見れば放棄者が相続人として何の財産も受け継ぐ意志がないことが証明されます。

相続関係説明書

また、分割協議書と一緒に提出するもう1つの書類として、「相続関係説明書」が求められます。
これも相続人の関係を明確にするもので、この場合は被相続人の住民票除票や各相続人の戸籍謄本類からの正確な転記が必要となります。

④手続代行に関する書類

ここまで説明した相続放棄のための書類は、相続人が自ら手続きを進める時に必要なものです。しかし、相続人同士の人間関係によっては、申請が困難な場合も少なくありません。
この場合、弁護士などの相続関連に詳しい専門家へ手続き代行を求めるケースがあります。

手続代行処理者の委任状

まずは、手続代行業者への委任状が必要になります。この委任状の存在は極めて重要で、勝手な第三者による処理ではないという証明になります。
書式はどんなものでも構いませんが、相続放棄人と手続代行者の名前と住所などが確認できなければなりません。

手続き代行者の印鑑証明書

また、この委任状の情報が正しいことを証明する書類も必要となります。相続人情報は相続人の戸籍謄本が使えますが、忘れてはならないのが手続き代行者の証明です。
この場合、委任状にはサインと捺印も必要であることから、手続き代行者の印鑑証明書が求められることもあります。